――戦がまたはじまる。
いま、玄徳様がみんなを集めて、軍議をひらいている。


私たちの世界が遠呂智によってくっつけられてからずいぶんたったわ。
せっかく遠呂智を倒したのにまた妲己などが動きはじめたこの世界。そこに新しくやってきたのは私たちとも稲とも違う時代の女の子、ミオ。
太公望殿が連れてきたから最初は仙人かしら、と思った。けれど様子が違っていて、それはそれはとてもかわいい普通の女の子だった。それこそ私や稲の時代にいたら有り得ない戦を知らない澄んだ瞳。この瞳もいつか蔭っちゃうのかしら、なんて残念に思った。


「皆、近くの村で遠呂智の残党と思われる鬼たちが暴れているらしい。…今回は私も行こうと思うが、ほかに誰かきてくれるものはいないか」
「劉備将軍、私も行こう。なにやら怪しげな気配がする」
「私も行くわ!玄徳様だけに戦わせられるわけがないもの」


それは本心。やっと一緒にいられるようになった愛しい人を、ひとりで危険な目にあわせられるわけがないのよ。
だけど今回はそれだけじゃない、聞けばミオも行くみたいなのよね。ミオの初陣とでも言えばいいかしらね。戦えないからずっと本陣で指示を出すとは言ってるけど心配なのよ、どうしても。稲のお父様も行くみたいだし、心配はいらないのかもしれないけれど、ここで不安にかられるよりかは一緒に行ったほうが早いっていう結論。


「ミオ、無理しないでね」
「それはこっちの台詞だよう。ぼくよりしょうちゃんのほうが危険ってことわかってる?」
「私は大丈夫、みんなと一緒にいるもの。いーい?敵が迫ってきたら陸遜を盾にして逃げるのよ!」
「うえぇえ…!?」
「ふふ。いい度胸ですね、尚香殿」
「そ、そんな恐い笑顔出してもむ、無駄よ!ミオに怪我させたら承知しないから!」
「はあ…もちろんミオは守りますよ。尚香殿と違ってかわいいかわいい妹弟子ですからね」
「こいつ腕はたしかだから、頼っていいのよ!」
「うん!わかってるよう、頼れるのわかってるから、頼りにしてるもん」
「ああもーう、そういうとこかわいいんだから!」


慣れた格好のほうが動きやすいから、とあの変な未来の服と、ここの服をあわせた格好をしたミオを抱きしめる。ああ陸遜とふたりにするのも別の意味で心配。野蛮な男たちって嫌になるんだから!
………ああそうだわ。もうひとり。


「太公望殿も、お願いしますね」


なにしろ巻き込んだのはこの人だ。それで傷つけたら許せるものじゃあない。


「……陸遜殿がいるから心配はせぬが…まあ用心はしよう」
「あ、はは……しょうちゃん心配しすぎー。ぼくだって子どもじゃないんだから」


あんたはまだまだ子どもよ。
それにしても、あら?やけに素直ねー。……ああ、そっか。ずっと違和感を感じていたけれど、やっぱり私の勘は正しかったのよ。
本人気づいてるかわかんないけど、太公望殿のミオを見る目が優しいと思ったのはきっと気のせいじゃないのね。まあ守ってほしいのは敵からじゃないんだけど。



「まーた、子ども扱い!
はあ…だいじょーぶってぼくの勘も言ってるし、ちょっとぐらいは信じてよう。ほら、準備しなくちゃ」
「ああそうですね。そろそろそんな時間です」
「………わかった、わよ」


そういたずらに笑うミオを最後にぎゅっと抱きしめて、はなす。陸遜と一緒に消える背中を一度見つめてあたしも自分の支度をしようとその場をはなれた。


(いざとなったら私が守れば、いいのよ……ね?)










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