もうこの一週間の日課となってしまった、夜就寝前にミオの部屋を訪ねること。
はじめは様子をうかがうことが目的だった、しかしいまはミオがその日にあったこと話すのを聞くのが、どこか楽しみとなってしまっている。毎日毎日、女子というのはよくも話の種がつきないものだ、と半ば感心する。

「る……―、こんな感じ、かなあ。お粗末さまでした」
「いや、なかなかに興味深かった。感謝する」
「どういたしましてー。まわりにもれてないといいなあ…恥ずかしいんだよう、まったく」


子どものような容姿に相まって、子どものような態度に話し方。これで子ども扱いをするなと言われても説得力がないというのに。くるくると変わる表情が美しい。そう思い始めたのはいつからだったか


「ああそういえば、もうひとつ伝えたいことがあった。……そろそろまた戦が始まる」
「いくさ?」
「ああ。この近辺で鬼共が暴れているらしい……そなたにもついてきてもらおう」
「んー、わかったよう」
「ずいぶんとあっさりしてるものだな」


普通はもう少しためらうものだと思ったが。ミオはため息をついて、指を一本、私に突きつける。


「だって、じゃなかったらなんのためにせんせいに習ってるのさ。実際に役立てるかわかんないけど、一回経験したかったしねえ」
「そう、か……つ、強いな……」
「(ある意味慣れてるし、)女は度胸、だよう。だけどねえ、いっつも弱いんだよ。ぼくも、望ちゃんたちみたいに戦えたらいいのにね」
「それは困るな。そなたは戦場に立たなくてよいと劉備将軍に私は言ってしまった。約束を違えるのは、美学に反する。それに諸葛亮殿もそなたが血にぬれるのは望まぬだろう」
「――そんなの、もうおそいんだよう」
「な、に?いまなんと…」
「…へ?いまなんか言ったっけ?」
「…………いや、多分聞き間違いだ。ああそうだ、私もそなたみたいな幼い娘が戦場にたつのは心苦しい」


聞き間違い、だと思う。かすかに聞こえただけだった。それに聞き取れなかった。
不思議そうに目をしばたかせて、ふうん、と呟く少女におかしなところはない。………最近、疲れているのだろうか。



「だーかーら、ぼくは実際15なんだって。……でも、みんな優しいねえ」
「人の子のことはよくわからぬが、きっとそうだな」
「にひひ、そういう望ちゃんも優しいんだよう」


少女が目を細めて笑う姿に、先ほどのことなんて吹き飛んで、なにかが込み上げてくる。これはなんだ?ああ、全知全能である私にもわからぬものがあるとは。いや、あるだけなんかじゃなくて。



(ああそうだった。まだ、そなたについてはわからぬことだらけだったのだ)









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