やさしさなんて知らなくてよかったころ

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振り | ナノ




「…それは罪悪感からのごめん?」

仕事を終えてすぐに向かって来てくれたのだろう。準太の髪は乱れていた。いつもなら指で髪を直してあげるのだけれど、今日はそれが出来なかった。久しぶりに会う彼の第一声が謝罪の言葉だったからだ。何に対する謝罪なのか私には分からなかった。泣かせてごめん、準太はそう言った。そう言った準太の表情はとても傷付いた顔をしていた。これから私を振るから、その罪悪感からそんな表情をしているのだと思った。彼が来るまでの間、私はずっと考えていた。彼はきっと私の他に好きな人が出来てしまったのだろうと。だから私に会わなくなったのではないかと思った。終いには実はバイトなんかしていなくて、その彼女と会っているんじゃないかって疑ってしまった。そんな事考えてたくないのに。そんな事思いたくないのに。考えれば考える程、私は暗闇に堕ちていく気分になった。そしてもう覚悟を決めようと思った。準太がそう思ってしまったなら、私にはもうどうしようもない。引き留める理由が見つからなかった。だって私なんかより綺麗な人も、可愛い人もたくさんいるから。準太はかっこいい。だからきっと私なんか似合わない。そう考えてしまった。そう結論を出してしまった。

「…罪悪感はある。だけどお前が考えてる事に対する罪悪感じゃない。」

私はびっくりして、これでもか、という程目を見開いた。違うならどうして謝るの。好きな人が出来たんじゃないの。ぐるぐる頭を回るのは準太に対する疑問ばかり。それを見かねたのか、準太はとりあえず中に入ろうと、私の手を引いた。はっと辺りを見渡せばここは部屋ではなく、玄関先だったと思い出した。準太に手を引かれてそのままソファーに2人して腰をかけた。手は握られたままだった。

「最初に言っておくけど、俺が浮気とかありえないから。絶対。」

俺はお前にベタ惚れなんだから。ってあまりにも優しく笑うから、涙が溢れそうになった。違うんだ、別れ話なんかじゃないんだと、やっと思う事ができた。それから準太は何故か口ごもって、私から目をそらした。なんだか恥ずかしそうにしている。どうしたの、と聞けば一層口を詰まらせる。どうしたのか不思議に思いながらも、彼が口を開くのを待った。何だか今は待つべきなのだと思ったから。準太の手を握り返して、彼が再び口を開くのを待った。すると意を決したのか、準太は私の目を見て言った。

「俺と、結婚して下さい。」

握られたままの手がより強くなった。準太が緊張しているのが分かった。さっきまでずっと黒いもやもやがあって、不安でしょうがなかったのに、今はこんなにも幸せな気持ちで満ちている。ずっと準太と一緒に居る事ができる幸せに、涙が溢れた。けれどこの涙はさっきまでとは違うもので、嬉し涙なのだと自覚する。準太と一緒ないると、一瞬で様々な気持ちが交差する。だけど恋をするってそうゆう事。最愛の人だからこそ、その人の言葉一つで一喜一憂するのだ。特別だから、その人がかけがえのない人だからこそだ。私にとってはそれが準太だった。そして準太も私を選んでくれた。こんなに嬉しい事ってないね、こんなに幸せな事ってないと思うの。素直に大事にしたいと思った。この気持ちを、想いを大切にしたいと思った。

「…返事は?」
「末永く、お願いします。」

薬指に光る指輪を通した。バイトをしていたのはこれが理由だった。ただ君を恋しく思い、ひたすら君を見つめてきた日々。それが今日からは一緒に、全てを君と一緒に過ごす日々へと変わる。守ると誓った。君を幸せにすると誓った。それを嘘にはしない。本当に大切だから、かけがえのない存在だから。君を守るよ、一生君を守る。ありがとう、俺と出逢ってくれて。ありがとう、俺の手を取ってくれて。幸せにします。君の笑顔をずっと、一番側で見られるように、そう願います。これからの日々に幸福を、君の薬指に誓う。



(変わらない想いよ永遠に〜君と過ごす日々を誓う〜)



101210 fin


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