やさしさなんて知らなくてよかったころ

Information

spanで下線
markでマーカー
strongで重要事項
emで強調
セクションリンク
class="link"

class="left"で左揃え

midashi

section>section

Main contents

Long story

定義リスト
テキスト
リンク *
テキスト

Short story

icon
振り | ナノ




人は幸せ過ぎると逆に不安になるって言うけど、本当にそうなのだと実感した。高2の夏、あれ以来私たちはずっと一緒にいる。私が準太に抱く恋心は色褪せることなく、いつもドキドキしっぱなしだ。要はバカップルなのだろうと、友達に冷ややかな目をされたのは忘れられない。だけど決して嘘じゃなくて、本当に私は準太が好きで堪らない。優しく笑う顔に、胸が締め付けられて、すごく幸せだと感じる。幸せなはずなのに、どうして不安に思ってしまうのだろう。この幸せが不安定なものだと、心の何処かで思っているのだろうか。私はまだ準太を信じきれてないのだろうか。その歪みが不安となって現れてしまっているのだろうか。だったらとても失礼だと思った。だって準太は私を好きだと思ってくれているのに、私はそれを信じていない事になってしまうのだから。えっちょっと待って。準太は私の事今も好きでいてくれているのだろうか。付き合いだした頃に比べれば、明らかに減ってしまったメールや電話。しかも最近はもっと酷い。あれ、もしかして私の事もう好きじゃないのかな。そう思ってしまったら、思考はどんどん嫌な方へ進んで行く。もう自分では止められない。準太に否定してもらえるまで、私はずっとこのままだと思った。そんなのは嫌だ。準太に確かめてみようかと、携帯を手にしたけれど、久しぶりに私から電話をかけるのに、いきなり私の事まだ好き?なんて聞けるはずもない。それにもし、そうだよなんて言われてしまったら、きっと私はもう立ち直れない。だけど、このままじゃいられなかった。

「もっもしもし!!」
「えっもしもし?どうした?」

覚悟を決めて準太に電話をした。電話から聞こえてくる彼の声にドキドキしながら、どう切り出そうか悩んだ。いきなり言ったら変な女だと引かれてしまうだろうか。けれど確かめずにはいられない。この不安を打ち消すには準太から否定してもらうしか術はない。お願い、どうか否定して。まだ私の事を好きだと思っていて欲しい。頭の中でぐるぐる考えて、泣きそうになる自分を戒めて、私は口を開こうとした。だけど、それは電話の向こう側の声によって遮られた。

「おーい高瀬ー!!早く戻れ!!」
「はいっ今行きます!!」

馬鹿だと思った。私は今間違いなく彼の仕事の邪魔をしている。準太を困らせた。こんなんじゃ彼女失格だ。準太は今バイト中で、仕事をしているのに、私は何をしようとしているの。彼にまだ私の事を好きかどうか確かめる?馬鹿じゃないの。バイトの最中にこんな電話かけてくる彼女なんて、迷惑以外の何物でもないじゃない。零れ出てくる涙を必死に耐えながら、私は準太に何でもない、邪魔してごめん、とだけ伝えて電話を切ろうとした。でもね、私知らなかったよ、準太がまたバイトを増やしていたことに。だけどそれがきっと答え。私なんかどうでもよくなったのかな。馬鹿だな電話までして。ごめんなさい、もう一回そう言って、今度こそ電話を切ろうとした。

「ちょっ待って!!今日絶対お前ん家行く。だから待ってて。」

準太はそう言ってすぐに電話を切った。えっ何だろう。別れ話でもするのかな。本当に私の事どうでもよくなった?私はまだ準太が好きだよ。だけど邪魔になんかなりたくない。どうしたらいいの。準太を待つ時間が早く過ぎてしまえばいいと思った。この時の私の中には不安しかなかった。



(花が咲くまであと少し)



101103



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -