やさしさなんて知らなくてよかったころ

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ぽかぽかした陽気の中、私は自分で選んだ真新しい制服に身を包みながら、校門をくぐった。無事に受験を終え、今日から高校生になる。知らない人ばかりで心臓がドキドキする。こんな時、頭に浮かぶのはやっぱり彼の事だった。彼が今隣に居てくれたら、きっとこんなにびくびくしないだろうな、なんて考えた。彼を忘れる為にわざわざ離れた高校を受験したのに、これでは意味がない。一人で、ちゃんと立たないとダメだと思った。この場所で私はスタートラインに戻って、また一から頑張ろうと決めていた。所謂高校デビューというやつだ。恥ずかしい事かもしれないが、幸い私の中学時代を知る人はいない、と思う。もし居たとしても、それを気にする事がないように、寧ろ笑って過去話にできたらいいと思う。そう心の中で強く誓った。

「これより入学式を挙行致します。」

長い入学式が始まった。一人一人名前を呼んでいく、それぞれの担任をちらりと見ては、また視線を呼ばれた本人へと目を向ける。なんだか色々な人がいるな、と思った。中でも目を惹いたのは金髪に染まった一人の男の子。すごい目立ってるなーと思いながらも、私は心のどこかで安心していた。彼は染めているのだと思うけれど、金髪に比べたら私の髪色は大分落ち着いて見えるだろう。高校デビューをすると決意したものの、やはり中学時代の記憶は私にこびりついていた。またあの苦しみや、恐怖が襲ってくると思うだけで、体が言う事を聞かなくなる。そして決まって出てくるのは彼で。私を包んでくれる彼が恋しくて堪らなくなる。決めたのに、彼に頼らずに生きていくって。弱い自分が悔しくて涙が溢れそうになった。だが、それは名前を呼ばれた事で阻止された。現実に引き戻され、少し安心した。

「君、とそこの君もちょっとこっちに来なさい。」

いかにも厳しそうな、体育会系の先生が私、ともう一人を呼び止めた。誰だろうと思い、後ろを振り向けば、そこにはさっきの金髪の男の子がいた。私が振り向くと思っていなかったのか、その子はびっくりしたような顔で、私を見つめていた。そしてにこり、と笑った。その後やはり先生に髪色を注意された。私がこれは地毛です、と言っても、中々信じようとしてくれなかった。だが最終的には納得してくれたみたいで、あとで申請書を出すように言われた。そしてもう一人、金髪の彼も先生に疑われたが、なんとか誤魔化して見逃してもらったみたいだった。きっと先生分かってるんだろうな、って思いながら職員室から出た。

「その髪色地毛なんだな?」
「…えっ」
「あれ?地毛なんじゃないの?」

いきなり話しかけられて、びっくりした私はすぐに返事をする事が出来なかった。私は慌てて地毛だと言う事を伝えると、その男の子はまたにこり、と笑った。ダメだ、重なってしまう。

「綺麗な色だな!」

ああ、彼と同じ事を言った。



(ねぇ、私を覚えていますか)



100720
100803 加筆修正


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