やさしさなんて知らなくてよかったころ

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雨月 | ナノ




満点の星空の中、織姫と彦星は年に1回のこの日を迎える。大好きな人と過ごすこの1日が、2人にとってどれだけ待ち遠しいものか、なんて簡単に想像することができる。大切な人との大切な1日。ずっとずっと待っていたこの日。毎日彼の事を考えて、今何をしてるのかな?怪我してないかな?私を、覚えていてくれてるかな?って不安になって、そうして1年を過ごすのだ。体が弱いわけでもない、何処か悪いわけでもない。なのに私はここから出る事ができない。ただ“力”が、他の人にはないそれが強すぎるせいで。私のこの力は厄を呼ぶらしい。私を襲おうと多くの妖が家を破壊していった。その度に両親は全力で守ってくれた。本当に優しい両親だった。私のせいで怪我をした事もあったのに、それでも笑って大丈夫だと言ってくれた。私にはそれが苦しくて、耐えきれなくて、1人殻に閉じ籠った。もう私のせいで誰かが傷つくのを見ていたくなかった。私は自らここに入ることを望んだのだ。そう、誰に言われる訳でもなく、自ら。

「…君、だぁれ?」
「…お前こそ誰だ。」

彼との出逢いは突然だった。3年前のこの日、私は久しぶりにあの離れから足を踏み出した。どうして、と聞かれたら上手く説明できないけれど、私はふらりと外に出た。何をしたいとか、明確な目的が在ったわけではない。だけど、この日が私の人生を変えたと言っても過言ではない。だから私は彼と逢う為にふらりと外に出たのではないかと、そう、想ってしまいたくなる。彼は大木の中で佇んでいた。緑色の髪と、綺麗な瞳に私は吸い込まれそうだった。女の子なのではないかと思うほど、綺麗な顔立ちの彼に、私は息を詰まらせた。そしてもう一つ。彼が人間ではないことを理解していた。姿形は私達と変わらない、だけど違う。何が違う、とはっきりと断定する事はできないけれど、私と違う事だけは理解できた。きっと力だけのせいじゃない。本能的にそう感じたのだ。

「君、人間じゃないね。妖…?」
「お前こそただの人間じゃねぇな。…どこの者だ?」

ピリピリと彼が気立っているのが分かった。確かに私ぐらいの力がある者だったら、妖達はまず警戒をするだろう。だからこれは正しい判断だ。なのに私はどうしても悲しくなる。人間にも、妖にも嫌われて、私は何のためにここに居るのか分からなくなる。必要とされない自分が酷く滑稽で、自分自身を消してしまいたくなる。だけど浮かぶのは両親の顔。彼らが居てくれるから、私はかろうじてここに留まる事ができるのだ。

「ねぇ、少しお話しない?」
「…は?」
「聞いて、ううん、そこに居てくれるだけでいいから。」

それからだった。こんな奇妙な関係が始まったのは。彼は本当に私の側に居るだけで、相づちさえも打たなかった。それでも私は話続けた。何の反応もないのに、それでも彼は聞いてくれていると、そう確信していた。何故かは分からないけど、そう信じていた。あれから3年経った今もこの関係は続いている。だけど逢うのは決まってこの七夕の日。それ以外の日で会った事はない。何故か、どうしてかは分からない。だけど私はこの日しか外に出れない。この離れから出れないのだ。それでもこの日だけは出れる。だから私はこの日が待ち遠しくて堪らない。早く彼に逢いたい。自然と早足にになる私。今日も私は彼に逢いに行く。走って、あの緑色の彼に抱き着いて、私の話を聞いてもらう為に…。

「露草!」

あぁ、やっと逢えた。



(心地好さを感じたのいつからだろう)



100707




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