やさしさなんて知らなくてよかったころ

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BSR | ナノ



「好きよ、佐助」

いつの間にかそれは君の口癖になっていた。会う度に君は俺に気持ちを伝えてくれた。だけど気付くべきだったんだ、君の、正体に。俺は君の名前しか知らなくて、何処で誰と過ごしてきたのか知らなかった。必要ないと思ったんだ。ただ君さえ居てくれれば、他に何も要らないと想える程、俺は君に溺れていたんだ。だから気付かなかった、気付けなかった。君がとある国の姫だということに。そもそも俺は忍であり、感情を出してはいけない生き物である。それなのに俺は君を好きになった。これは主に対する裏切り行為ではないのだろうか。けど旦那なら、喜びそうだ。旦那は俺が感情を殺す事を嫌うから。俺はいい主を持ったと思う。だからこそ、俺は旦那を裏切らない。だからこの感情は要らない。奥の奥にしまって、閉じ込めて消してしまえばいい。そう頭では理解しているのに、心は言う事を聞かなかった。頭とは反対に、俺はどんどん君を好きになった。そして気付いた時にはもう手遅れになる程君に惹かれていたんだ。

「なんで自分の正体隠すなんて真似したわけ?」
「…」
「結局はお遊びだったんだ?」
「…違う!」

君を問い詰めるのはお門違いだ。君に惹かれていく自分を、止める事が出来なかった自分が悪い。忍でありながら、感情を持ってしまった自分が一番悪い。なのに、君を悪者にしようとしてる。君は本当に俺を好いていてくれたのに。あの言葉達は決して嘘ではないと言い切れるのに。俺は君を傷付ける。自分自身を守る為に。一番最悪なのはこの俺だ。好きな女さえ、自分の為に切り捨てる。最悪だ。本当は少し気付いていたんだ。君がある程度の身分を持っていることに。君の立ち振舞いや、言葉使い。それは幼い頃からの教育によるものだろう。それぐらいなら俺は見抜く事が出来る。忍は偵察が主な仕事であるから、その辺りには長けているのだ。俺はあえてその事実から目を反らした。認めてしまったら、それこそ君とは会う事が叶わなくなる。結局はこの時選んでいたんだ。君と共に歩む事を。けれどそれを目の前にしたら、怖じ気づいた。君とは身分が違いすぎる、だなんてもっともな理由を付けて。怖くなっただけだ。君との歩む未来の先に、怖じ気づいた情けない男なのだ。

「まさか君が伊達の旦那の妹だとはね、まんまとやられたよ。」

伊達の旦那を敵に回せる程、俺は強くない。正直に言うならば、敵に回したくない。俺は自分が一番だから、危ない橋は渡らない。本当に君を愛していたのなら、伊達の旦那から連れ去ってしまってもいいのに。俺にはそんな度胸はない。酷い男だと、情けない男だと罵ればいい。それが事実なのだから。俺だって認めてる。君とはここでさよならだ。きっともう会えなくなる、話なんて二度と出来ない。でもごめん。俺は君とは歩めない。弱くてごめん、情けなくてごめん。でもそれが俺だから。どうか笑っていて欲しい。これからも笑って、幸せに過ごして欲しい。例えそれがどこの誰か知らない男の隣であっても。ごめん、



(君を好きだと想う気持ちに偽りはなかった)



***
忍苦様に提出。
参加させて頂きありがとうございました。

胡已 100917
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