やさしさなんて知らなくてよかったころ

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鋼錬 | ナノ




嫌い嫌い嫌い。自分が大嫌いでしょうがない。何をしても鈍くさくて、みんなに笑われる自分が嫌い。地味な私が嫌い。口ごもる私が嫌い。挙げたらキリがないくらい自分が嫌い。目が小さくて例えお世辞でも可愛いなんて言えない顔。悲しくて悲しくて、どうしてもう少し可愛く産まれてこれなかったのかと、思う日々。物心着いた頃から可愛くないと言われ続けた。そんな私が自分を好きになれるはずないじゃない。可愛くないって言われる度に私の中の何かが消えていって、残ったのは自分を大嫌いだと思う気持ちだけ。もう少し、もう少し、せめて人並みの顔に産まれていたら、人生違ったのだと思われて仕方がない。両親を恨んだ事も合った。どうして私を産んだのだろうと思った。けれどそれが口から出る事はなかった。だって両親は私の事をとても愛してくれたから。いつも私の味方でたくさん笑いかけてくれた幼い頃の記憶があるから。だから余計に嫌いになった。両親に対してそう思ってしまう自分が嫌いになった。もうどうしようもないくらい自分が嫌いだった。そんな時だった、彼と出会ったのは。

「そんなんで人生楽しいか?」

楽しいはずがないじゃない、私は悲鳴のような叫び声を彼に向けた。何故そんな質問をしたのか分からない。楽しいはずない。私はこの世界から消えてしまいたいの。けれど両親の顔が浮かんで、私はこの世界に留まってしまう。未練なんてないのに、死んでしまいたいのに、両親の事を思うと、私は死ねな違うだろ、彼が私の言葉を遮って、威圧感のある声で否定した。違う、とただそう一言彼は言った。分かってる、分かってるよ、貴方が言おうとしている事、分かってるよ。けれど言わないで、それを言ってしまったら、きっと私はもう戻れない。取り返しのつかない事になってしまうの。だからお願い、言わないでっ

「お前は誰かに必要とされたいんだろう。」

愛されたいんだろう。彼はそう言った。そうだ、そうだよ。私は自分を好きだと言ってくれる人に出逢いたかった。自分の事をどうしても好きになれないから、他人に好きだと言ってもらえたなら、私も少しは自分の事を好きになれるかと思ったんだよ。自分勝手だと思うでしょう?自分を好きになりたいから、誰かに好きだと言ってもらいたいと思ってるの。笑っちゃうよね、自分の事を好きになれない奴が、誰かから愛されるなんて、あるはずないよね。馬鹿げた話だと思うのでしょう?けれどそれだけ私は誰かに好きだと言って欲しかったの。私だけを見て欲しかったの。私という存在を認めて、愛して欲しかったの。両親がいるじゃないかって思うでしょうね。だけど人間はとても欲深いから、他人から愛されていたいんだよ。分かるはずないかもしれない。それでも私は両親以外の誰かから愛されてみたかったの。

「分かるよ、その気持ち分かる、から」

その瞬間に私の頬には一筋の涙が零れた。分かってもらえた事が嬉しくて、堪らなくなった。私の存在も認めてもらえた気がしたから。けれどそれだけじゃないって事も分かってる。ねえ、私ね、本当はずっと前から貴方を知っていたの。ずっと見ていたの。金色に輝く髪が綺麗で、強い眼差しがひどく羨ましく思えた。だってその瞳は私がずっと欲しかったものだから。何の目標もなくて、死にたいと願いながら、まだこの世界とお別れしたくなくて、誰か私を見つけてくれる人が現れるんじゃないかって。そんな淡い期待をぶら下げて、自分を嫌いだと言い続ける日々。けれど彼は違った。私とは全く正反対で、寧ろ世界が違う人なのではないかと思った。要は私はあの日から彼に強く惹かれていたのだと思う。

「お前はまだ世界を知らない。命を簡単に捨てるな。」

私は彼の言葉に何度も頷いた。彼は私の気持ちを分かってくれた。だったら私を好きだと言ってくれる人だっているかもしれない。まだ諦めるのは早いかもしれない。頑張ってみよう。世界をもっと見てみよう。そしたら出逢えるかもしれない。私、頑張ってみるよ。

「ありがとう、エド。」
「おう、辛くなったらまた来いよ。」
「…!ありが、とう。」

ダメだよエド。そんな事言われたら戻ってきてしまいたくなるじゃないか。私は貴方が好きなんだから。好きな人にそんな事言われたら戻ってきたいよ。でもこの気持ちは報われないから、私だけの秘密にするの。いつか貴方の前に、貴方よりずっと素敵な人を連れて来てみせるよ、それじゃあエド、一旦お別れだ。ありがとう、私はきっとこの日の事を一生忘れないよ。ありがとう、貴方がとても好きでした。どうか幸せに。



(いつか出逢えると信じて)



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