やさしさなんて知らなくてよかったころ

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鋼錬 | ナノ




私は好きだった。皇子という立場のリンが。自分の信念を曲げないリンが。私に笑いかけてくれるリンが。一人の男としてのリンが。全てが、リンの全てが好きだった。だから、例えこの命が尽きようとも、リンを私の全てで守るつもりだった。はずたったのに、私は出来なかった。リンを守れなかった。リンはホムンクルスに体を売ったのだ。どうして貴方がそこまでするんだ。どうして貴方だけ。ホムンクルスに体を売るなんて、あり得ない。ましてやリンは一国の皇子だ。もし失敗していたら?誰がヤン家を守って行くと言うのだ。貴方しかいないと言うのに。

「どうしてあんな無茶をするんですか!」
「おっ落ち着け、な?」
「落ち着けるわけないでしょう!?私は…!」

私は貴方が死んでしまうかと思ったんだよ。そんな事ないのに、あるはずないのに、あの瞬間、怖くて怖くて堪らなかった。もう二度と貴方に会えなくなってしまう気がしたから。リンが居なくなってしまったら、私はどうしたらいいの?私の全てはリンなんだよ、リン以外要らないの。他の主に仕えるなんて考えられない。私の主はリンだけ。リンだけを主に決めてるのは私だけじゃない。ランファンだって、フーじぃだってそうだ。だから貴方は死んでいけない人なんだよ。貴方は1人しか居ないの。代わりなんて居ない。だけど、私は違う。私はただの家来だ。いくらでも代えはきく。だから、ホムンクルスに体を売るのは私がすべき事だったんだ。

「貴方は一国の皇子です、皇子は、ヤン家の当主は貴方だけなんですよ!」
「…、すまない。」
「こんな事は、私にやらせれば」
「それはダメだ。」

私の言葉を遮って、リンははっきりと言った。どうして、私はそんなに信頼されていないの?やっぱり私は役立たずなの?リンに必要とされない事が悲しくて、私の目からはポロポロと涙が溢れた。主の前で泣くなんてしてはいけない。主を守る為ならば、感情を一切、切り捨てるのだと教えられた。そして主の前では決して弱味を見せてはいけないのだ。主を不安にさせない為だ。頭では分かっているのに、私の心は言う事を聞いてくれない。それどころか私の涙は溢れるばかりだった。ただ、ただ涙を流す私にリンはひたすら私の涙を脱ぐってくれた。こんな事、させてはいけないのに。突き放そうとして腕をリンの胸に押し付けた。でもその手はリンに取られて、私は抱きしめられた。何が起こったか分からなくて、頭の中が真っ白になった。どうして、どうして私は抱きしめられているの。リンと私はただ主と家来の関係でしょう。ねぇ、どうして。

「俺の代わりは確かにいない、だが、お前の代わりも誰も居ないんだ。」
「……」
「だから…!」

自分をもっと大事にしてくれ、リンは今にも消え入りそうな声で、私を更に抱きしめて言った。また涙が溢れた。好きな人に、大事な人にそんな事を言われたら、自惚れてしまうよ。きっと貴方は私を一人の部下として心配してくれているのだろうけど、私は貴方に抱いてはいけない感情を持っているから。だから、その言葉が嬉しくて、嬉しくて堪らないんだよ。



(…好きだ、欲しいのはその言葉)



100413


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