やさしさなんて知らなくてよかったころ

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銀魂 | ナノ



毎日毎日淀んだ空を眺めて、そして彼を思い出す。決して好きではないこの星で、私は彼を待っている。随分前にこの星を出て行った彼が、今どこにいるのか知らない。この星は何もなくて、在るのは血に狂った夜兎だけだった。本能の赴くままに血を求め、辺りを濁していく。歪んだこの星で息をするのは辛くて、早く逃げ出したい。誰も私のことを知らない、そんな星に行きたくて堪らない。私は夜兎で、血を求める本能だって持っている。だけど怖い。黒い、ぐちゃぐちゃな感情に呑まれてしまうのが、怖い。彼は違った。己の本能に足掻くことをしないで、素直に受け入れていた。それはいっそ清々しいほどだった。だからこそ彼はここを出て行ったのだろう。更なる高みを、己の欲を満たす為に。私を置いて。


灰色に染まった空を見る度に君を思い出す。俺が産まれたあの星で、君はまだ息をしているのだろうか。それともとっくにあの星を出て行ってしまっただろうか。君を想う俺はきっと可笑しいのだろう。他人を気にするなんて、なんて俺らしくない。だけど想わずにはいられない自分がいる。出来るなら君に会いたい、触れたい、側にいたい。だけどその願いは叶うことがないと、俺が一番知っているじゃないか。誰よりも戦いを嫌う君に、誰よりも戦いを愛する俺が、触れられるはずがないんだ。きっとそれは許されないことで、違う、俺が怖いんだ。君に拒絶されることが怖いんだ。春雨で団長をやっている俺が、たった1人に拒絶されることを恐れてるなんて、本当に笑わせる。だけどそれほど君が愛しい。


彼は覚えているだろうか。この星を離れると告げられた日、私はきっと顔を歪ませていただろう。私は神威が好きだった。夜兎の本能は嫌い、だからそれに忠実な彼も嫌い、だった。だけどそれ以上に彼が優しいことを知ってしまったから、笑ってくれる彼が愛おしいと思った。いつまでも一緒に、彼の隣を歩いていきたいと思った。彼となら堕ちても構わない、そう思えた。だからこそ、手を離して、欲しくなかった。

「1年に1回、この日に帰ってくるよ。だから…」

帰ると、君に約束したのに俺は一度も守っていない。きっと君は涙を流しながら、俺の名前を呟いてくれているんだろう。あの星を離れて、俺はそれまで以上に手を染めていった。血が消えないものだとしたら、俺は全身真っ赤に染まっているだろう。そんな俺と一緒に堕ちて、君に何が残るって言うんだ。まだ綺麗な君はそのままで。純粋なままでいて欲しかった。だから逢わない。こんな正反対な俺たちが、共に歩むなんてあり得ないんだ。そう、割りきったはずなのに、どうしてこんなに寂しいと、心が泣いているんだろうか。

「逢いに行くよ、今年こそ。」

何度目か分からない言葉を呟いた。




(待ってる、待ってる君を待ってる)



***
○凵様に提出。
参加させて頂きありがとうございました。

胡已 100811
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