一万打 | ナノ






「なまえ君、泳ぎましょう?」
「んー」

真っ青な空に光輝く太陽、きらきらと反射する水面。一応屋内プールであるここの天井は透明なアクリルか何かで出来ており、中にいながらにして屋外にいるような気分が味わえるようになっていた。

「しっかし、赤司んちはすげえな」
「マジ規格外っスわー」

ここは都心から少し離れた場所に位置する、うちの所有物だ。幼い頃はよく遊んでいたが、来るのはわりと久々だった気がする。

「真太郎、ぬいぐるみ濡れるんじゃない?」
「ふん、防水加工済みなのだよ。ぬかりない」

隣でイルカのぬいぐるみを抱えている真太郎は、これから泳ぐにも関わらず眼鏡を掛けっぱなしだった。大丈夫だろうかと心配になるけど、まあ真太郎だし平気かな。



「全員ストレッチは済んでるな?」
「あ、赤ちーん。ばっちオッケーだよー」
「黄瀬、100mやっか」
「望むところっスよ!」
「はしゃぎすぎて怪我しないようにな。敦、ここに菓子を持ち込むな」
「えー」

涼太と大輝が派手な水飛沫を上げたのを皮切りにして、各々水面に足を滑らせる。真太郎はイルカを椅子に置いていた。いや、眼鏡は?

「はあー、きもちー」
「なまえ君、温泉じゃないんですから」
「だって適温だしー。そういえば、テツヤって泳げるの?」
「まあ、一応は」
「おお、じゃあ競争しよ」
「いいですよ」

軽く潜ったり飛んだりして身体を水に馴染ませる。程よく冷たい温度が気持ちよくて、俺の気分はうなぎ登りだ。
よーいどんで壁を蹴れば、水の流れていく感覚がなんだかとても心地よかった。

「おー…なまえちん、はっや」
「なまえは泳ぐのが好きだからね。楽しそうで何よりだ」
「…青峰はなぜあんなに飛沫を上げているのだよ…」


ぷは、と水面に顔を出せば、テツヤが泳いでくるのが見える。にんまりと口角を上げて待っていたら悔しそうに眉を寄せて「もう一回です」と人差し指を立ててきた。

「やだよー、疲れたもん」
「勝ち逃げですか…ぶっ」
「あ」
「あー、青峰っちどこ狙ってんスかー」
「あ?わり、テツ」
「青峰君…」

突然テツヤの後頭部に水が降ってきて、何事かと思ったら大輝たちが水を掛け合って遊んでいた。中々の勢いで飛び交うそれに青筋を浮かべたテツヤは、突然潜ったかと思うと2人の元へ向かっていく。何かするつもりなんだろうなあと笑って、征十郎の方に身体を流す。

「征十郎ー」
「ん。気持ち良いね」
「うん。敦は泳がないの?」
「浮いてる方が楽しいー」
「そう?」

征十郎の首に後ろから腕を回して、抱き着きながら脚を浮かせる。首筋に頬擦りすれば張りついた髪を軽く纏めてくれた。

「髪、伸びたね」
「あー…そろそろ切ろうかなあ。真太郎の前髪も切ったら?」
「俺は別に…む、何をするのだよ」
「眼鏡、危ないから外した」
「何も見えないのだよ…」
「うん、近い近い…、っ!?」
「これは僕が預かっておこう」
「む?ああ、頼む」
「せ…じゅうろ、びっくりした…」
「ああ、すまなかったね」

急に回った視界に思わず思いきり抱きつくも、平然とした様子の征十郎に何がしたかったのか分からなくなる。呆然とする俺を余所にあっさりと眼鏡を奪われて、ついでに腕を解かれてしまい水中に沈む。鼻まで顔を出したら額を軽く叩かれた。

「もー、なんなの」
「なんでもないよ」

いいから泳いでおいでと手で払われる。なんだかよく分からないが機嫌を損ねても面倒なので、テツヤたちの方に向かうことにした。



「テツヤー、構って」
「なまえ君…」
「なまえっちぃぃ、もうちょっと危機感持たないとダメっスよ!!」
「え?」
「んなことよりなまえ、勝負しようぜ」
「あ、うん。いいよ」
「おっしゃ、いくぞー!」


「…あれで緑間君の目が悪くなかったら大顰蹙でしたね」
「え?ヒンシュク?っスか?」
「……なんでもありません」



(征十郎、お腹すいた)
(ああ。みんな、そろそろ昼食にしようか)
(((おー!)))
(め、眼鏡はどこなのだよ…!)
(緑間君、こっちです)


―――――――――――――――――
キセキとプールでした。どうしても赤司君が市民プールにいる図が思い浮かばなかったのでこんな形になりました〜(´∀`)
リクエストありがとうございました!!何かありましたらお申し付けくださいー!




「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -