一万打 | ナノ
「うへー、なかなか混んでんなぁ」
見渡す限り人人人の市民プールを、浮き輪を付けたままのかなり邪魔な状態で闊歩する。覚束無い足取りで着いてくるなまえの目印になるようにと選んだビビッドカラーのそれは、俺の目には少し痛い。
「なまえー、まずは流れるプールでも行っとく?」
「和成がはぐれないなら」
「あっはは、はぐれるとしたらなまえだろ!メガネナシのなまえほど怖いもんはないからなぁ」
「見えないんだからしょうがないだろ!」
なまえの裸眼での視力は0.1にも満たない。中学時代離れていた間にまた下がったらしく、高校に入って再会した彼はまた新しいメガネに替わっていた。
「あー、きもちー」
「おっさんみたいだぞ、止めろよ」
「だあって毎日毎日暑い中汗だくになってんだぜー?水ん中サイコー!」
「はいはい…やっぱり、男二人でプールってむさいなぁ」
「俺はなまえと二人ってだけでサイコーだよん!っと、お?」
「わっ」
「あーもう、なにしてんだ。すいませ…」
「「あ」」
浮き輪に掴まってゆらゆらと流れに身を任せていたら、進行方向に背を向けた瞬間に他の客にぶつかってしまった。呆れた表情のなまえに苦笑いを返して振り替えると、やけに眩しい金色が目に入る。
「あれ、キセキの世代の黄瀬涼太…じゃん」
「あー!緑間っちと一緒にいた人!」
「お、覚えてたんだ?高尾でーす、よろしく!」
「黄瀬…?モデルのキセリョ?」
「え…なまえっちじゃないスか!?うわー、久しぶりっスー!!」
「ぶわっ」
妙にハイテンションなそいつは、水飛沫を上げながらなまえに飛び付く。何かを察したのか避けたなまえにほっと胸を撫で下ろして、然り気無く肩を抱いて黄瀬から引き離した。
「おい、和成?」
「いいから……なになにー、黄瀬クン程の人気者が一人でプール来ちゃってんの?」
「(コイツ…)…いやー、皆と来たんスけどはぐれちゃったみたいで!それにしてもなまえっち、中学以来っスねー」
一瞬殺気立った空気に包まれたその場だったが、黄瀬クンが何時も通りの営業スマイルを浮かべたことで切り替わる。
「黄瀬、皆って海常の人達?」
「違うっスよー、えっと…」
「黄瀬ェー!テメェはぐれてんじゃねーぞ!」
「まったく、なにやってるんですか」
「……げ」
「む?高尾?」
ぞろぞろと表れたカラフルな奴等に思わず顔が引きつる。おまけにメガネを外した妙に美人の真ちゃんまで。何なんだ。
「ん、緑間だ」
「なまえ?……おい高尾、どうしてここにいるのだよ。家の近くのプールに行くのではなかったのか?」
「いやぁ、ちょーっとレベル上げてみたんだけど…なんなのコレ…」
「メガネ外したなまえ君は久々です」
「相変わらずほっせぇなー」
「え、うわっ!?」
「青峰っち!セクハラ禁止っスよ!」
二人っきりでデートの予定だったのに、いつの間にか群がってきたキセキの世代でなまえの周りが埋まってしまっている。
「やあなまえ、久しぶりだね」
「あー、なまえちんだー」
「あれ?お前ら東京来てたの…?」
東京や神奈川にいる奴なら一緒に遊ぶのも分かる。が、何故秋田や京都にいるはずの奴までここに集まっているのだろうか…!
「だああああ!!なまえは!俺と!遊びに来てんの!!お前らはあっち行けよ!!!」
視力が悪いなまえと視線を合わせようと、キセキ達の顔は異常に近い状態になっている。情けなくも耐えきれなくなった俺は一人、隣で同情の眼差しを向けてくる真ちゃんを無視して叫び声を上げた。
「ほう…僕からなまえを奪おうなんていい度胸をしてるじゃないか」
「奪うとか奪わないとかじゃなくて…!」
「ん、ごめん赤司」
「なまえ?」
「また今度来たとき遊ぼ。行くぞ和成」
「え、えっ」
「お前達はこっちに集合なのだよ!」
浮き輪を引っ張りながら人を避けるように歩き出したなまえに引き摺られ、揃って唇を尖らせているキセキから遠ざかる。何だかんだ言いながら真ちゃんの後ろをついて回っているあいつらは正直写メ撮りたいくらいにおかしかった。(なんかアヒルの子供みてぇ!)
「なー、なまえ」
「ん?」
「今日俺んち泊まんね?」
「…いいよ」
――――――――――――――――
アヒルみたいに真ちゃんの後ついて回るキセキください<○><○>カッ
プールで仲良くわちゃわちゃしてしかもホモォってる高校生いたら思わず視線が逸らせなくなりますね。よしプール行こう。
高尾初めてでしたが楽しんで書かせていただきました!ありがとうございましたー!