一万打 | ナノ






「わあ」

きらきらと目を輝かせるなまえちゃんと私は、京都駅に程近いとある大社に来ている。観光したいとぼやいていたなまえちゃんに案内役を買って出たはいいものの、隣で笑う征ちゃんの圧力と後ろから飛び出してきた猫目野郎に負け、結局四人で来ることになってしまった。いいえ、征ちゃんは大歓迎なんだけどね!
ちなみに意地汚いゴリラは大食いイベントがあるとかで不参加だ。

「すごい…綺麗だね」
「うん、確かに良い」

朱い鳥居の下に佇む征ちゃん達は、それはもう言葉を失うくらい絵になっていた。征ちゃんも大概美人だけど、なまえちゃんはもっと幼い印象を受ける分危うさが際立ってる。
まだ青い木々に囲まれたどこまでも連なる鳥居の世界は、とても非現実的だ。数歩どころか数メートル離れた場所から二人を眺めているのは、纏う空気の清閑さに少しだけ圧倒されているからかもしれない。

「…すっげー…」
「そうねぇ…」

いつも煩い奴の口から零れた静かな言葉も、きっと此処本来の世界観のせいじゃない。







「…玲央、小太郎、案内をするなら僕達の前を歩くべきだと思うんだが」

暫くそうやって目の保養に努めていたら、いつの間にか止まっていた足並みに征ちゃんの呆れた声が届いた。はっとして意識を引き戻すと、なまえちゃんがこっちを不思議そうに見ている。

「玲央先輩?大丈夫ですか、もしかして熱中症とか…」
「あ、ううん!大丈夫よ!ごめんなさいねー」
「はあ…小太郎も、どうし「なまえー!!」っぐぇ」
「きゃあああなまえちゃんー!」
「…騒がしいな」

さっきまであんなに厳かだった空気は一変して、今度はぎゃいぎゃいと騒がしさでいっぱいになる。突然なまえに抱き着いた小太郎は、「なまえなまえなまえ」と名前を連呼していて少し不気味だ。狼狽えた様子のなまえを見かねて小太郎を引き剥がしてやれば、今度は僕の方に抱き着いてくる。一体なんだと言うんだ。

「小太郎、離れて欲しいんだが」
「ヤダ、赤司もなまえもここに馴染みすぎててこえーよー、狐より猫がいーだろ!」
「僕は言うことを聞くなら何でも好きだよ」
「俺は猫派だけど」
「あああ、なまえちゃんの髪が乱れて…ちょっとアンタ、気持ちは分かるけど征ちゃんもなまえちゃんもアタシ達を捨てたりなんかしないわよ!」
「え?捨てる?なに?」
「…取り敢えず、二人とも落ち着け」

玲央に髪を直されつつ意味の分からない行動に首を傾げていれば、いつの間にか僕の左手を小太郎が、なまえの右手を玲央が握る形になっていた。(僕となまえは元々手を繋いでいる)あまりにも横に広がり過ぎている気がするが、人も疎らな上達成感に満ち溢れたチームメイトの顔を見たら特に何か言う気も失せてしまう。なまえだけが未だ困ったように僕と玲央の顔を交互に見ていた。

「これじゃ写真撮れないんだけど…(ていうか両脇長身で固められるとか俺と征十郎の気持ち察して欲しい)」
「はいはい、俺が撮るー!ほい、ちーず!」
「…出来れば風景を撮って欲しいな」
「えー、それじゃつまんねーだろ」
「なまえちゃん、この近くにお豆腐のソフトクリームがあるのよー、後で食べましょうね!」
「豆腐なんて珍しい…良かったね、征十郎」
「ああ、楽しみだ」

ふわりと笑った二人を温かい気持ちになりながら見つめていれば、待ちきれなくなったらしい葉山が征ちゃんの手を引いて走り出す。引き摺られるようにして私達も足を進めたら、珍しく爽やかな風が吹いて木々を揺らして行った。

「あはは、お稲荷様にはやっぱり油揚げかな」
「そうだね」

後ろを振り返りながら笑う双子は、やっぱり不思議な雰囲気を醸し出している。握った手に少しだけ力を込めて、誰に向けているかも分からない対抗心を燃やした。





(おおー、すっげ豆腐の味する!)
(なによ、アンタも食べたことなかったの?)
(んー、さっぱりしてて美味しいですね)
(うん、もうひとつ頂こうか)
(征ちゃん!お腹壊すわよ!)
(?大丈夫さ)


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某所の千本鳥居は本当に見物です…!ということで洛山(-1)で京都観光でした。一ヶ所しか行ってねぇ。レオねぇは小太郎のことコタちゃんとか呼んでそうですが、取り敢えず無難な呼び方にしておきました←
この度はリクエストありがとうございました!何かありましたらなんなりとお申し付けください!




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