一万打 | ナノ






からからと下駄が鳴る。今日はお祭りがあるらしく、小太郎や玲央先輩に猛烈な勢いで誘われ約束を取り付けてしまった俺は、征十郎の藍色の浴衣を借りて2人で待ち合わせ場所へと向かっていた。ちなみに征十郎は錆浅葱色の浴衣を着用している。普段から和装を好む征十郎のそれは嫌になるほど似合っていて、知らない土地を歩いているせいでどこか落ち着かない心理も相まって直視するに耐えなかった。「なまえはすぐはぐれるからね」と、繋がれた手が熱くて仕方がない。

「あー、征ちゃんなまえちゃん、こっちこっち!」
「うわーやべえ、浴衣すっごい似合ってるじゃん!」

それなりの人手の中でも、2人の姿はすぐに見つけられた。飛び出た頭が2つ見えてなんとも言えない気持ちになる。(小太郎の頭には既に何かのキャラクターのお面がついていた)

「あら、なまえちゃんは女物着て来るかと思ったのに…」
「え」
「急なことだったから用意出来なくてね。次はそうしよう」
「さっすが征ちゃんー!」
「えっ」
「ドンマイなまえ!」
「いや、着ないから。バカ言わないでよ」

取り敢えず征十郎の背中を軽く叩いて、玲央先輩の側に寄る。不思議そうに頭を傾けた玲央先輩に心臓を掴まれた気持ちになりながら、回りの雑音に負けないよう少し大きめの声を出す。

「玲央先輩、浴衣すごい似合ってます…!」

きらきらと輝かせて見上げてくる赤い2つの瞳に、ふらりと意識が飛んでいきそうになる。なにこの天使は…可愛い…!後ろで不満そうにしている征ちゃんなんて気にならないくらいの破壊力よ!ありがとーと自分より大分下にある頭を撫でていたらシャッター音が聞こえてきて、携帯を構えた征ちゃんがにやりと口角を上げていて。

「なまえは随分玲央になついたね」
「え?…あら」
「あー、実渕ずりぃ!」

ぎゅうぎゅうと玲央先輩の腰に抱きついて、その溢れ出る美人オーラを十分に堪能する。あまりの暑さにすぐに離れることにしたけど、玲央先輩のおかげで征十郎に乱された脈拍もなんとか正常に戻ってきた。ありがとうございますと小さくお礼を言ったら、ただ綺麗な微笑みを向けられる。

「永吉がいないな」
「あいつはもう屋台荒らしに行ってる!俺等も早く行こー」
「なまえちゃんは何食べる?」
「えっと、りんご飴がいい…です」
「えー!焼きそばとかお好み焼き食おーよ!」
「アンタ本当にうるさいわね…!想像してみなさい、りんご飴食べるなまえちゃんを!最高じゃない!!」
「…なまえはフランクフルトだとかチョコバナナだとかも好きだよ」
「なにそれなまえ超あざてーな!!」

げらげらと笑いながら俺の頭を撫で回してくる小太郎と、口元を手で押さえて震えながらこっちを見てくる玲央先輩と、意味ありげな笑みを向けてくる征十郎にただただ首を傾げるしかできなかった。どれも屋台物としては普通にありふれた食べ物だと思うんだけど、何かおかしいところでもあったんだろうか。





(いや、だって普通に美味しいし…?)
(ああ。取り敢えずフランクフルトから食べるかい?)
(俺はりんご飴が食べた…っあっつ!)
(ほらなまえ、フランクフルトー!)
(キャアアアアンタはどうしてそう乱暴なの!?)
(ん?おお、赤司!)
(げっ、またむさ苦しいのが来たわね…!)
(…はふぅい)
(なまえ、浴衣を汚さないようにな)
(ひゃーい)



――――――――――――――
赤司君とレオネェの色気を存分に発揮しないまま終了してしまいました。土下座もんだこりゃあ(^p^)これなんかちがうと感じましたらなんなりと申し付けてください…!リクエストありがとうございました!!







「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -