陽炎の君 | ナノ








取り合えず一息



「よろしくお願いします」
「…どうも」

きっかりとお辞儀をして見せた征十郎君は、なんというかまあ、すっかり大人びていた。こうしてちゃんと会うのは10年振りだが、時というものは恐ろしいな。俺も年を取るわけだ。

「てか俺より背デカくねーかあれ」

当分の間征十郎君の部屋になるリビングの隣の部屋に通して、お茶を煎れながら一人ごちる。そんなに変わらないとは思うが、中学生であれとか今時の子は恐ろしい。何かスポーツをやっているのか、エナメル質の鞄持参だった。若者は若者らしく青春してるらしい。結構結構。

「ほい、お茶」
「ありがとうございます」

緊張している訳ではないらしいが、どこか少し固い征十郎君と一緒にソファーに座る。テレビは付けずに顔だけ征十郎君に向けた。

「俺平日は仕事だから、8時に家出て7時くらいに帰ってくるよ。飲み会とかある日は事前にメールしとく。休日はあんま家にはいないかも。あ、鍵はこれね。家のものは全部好きに使っていいから」
「はい」
「お昼はー…お弁当なんだっけ?あー、中学生男子ってどれくらい食うのかな。弁当箱とか持ってきてる?男の手料理だからあんま期待はしないでくれな」
「…作ってくれるんですか?」
「うん?もちろん。嫌いなものあったら教えといて。一応三食作るつもりでいるけど、夜は難しいときもあるからそんときは冷蔵庫漁っといてね」
「分かりました」
「ん。あとはー、征十郎君の生活リズム教えて」
「朝は朝練があるので7時には家を出ます。夜は8時までには帰りますので」
「おー、分かった。早起きしなきゃなー」
「…すみません」
「え?あっは、気にすんなよ!」

物静かだなあ、と思いながら取り合えず思い付くことを伝えていく。最後にわしゃわしゃと頭を撫でてやって、よろしくお願いしますとお互い頭を下げた。










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