陽炎の君 | ナノ
始まりの唄
子供を一人預かることになった。あの赤司家のご子息らしいが、会っていたのは随分前のことになる。名前は確か征十郎だったかなあ。俺が中学に上がる頃までは親戚の集まりがあったときに遊び相手になってたもんだが、それ以降は確か全く会っていない。
いくら両親が長く家を空けるからって、俺の家に泊まりに来るよりは赤司の家に家政婦なりなんなり呼んで色々してもらった方がいいんじゃないだろうか。こっちは男の一人暮らしなんだから、そんなに広い家に住んでるわけでもないんだし。
まあ、赤司家からの「うちに来るには紗雪君の通勤ルートを変えなければならないし、紗雪君の家からなら中学校も近い」という提案という名の決定事項を伝えられてしまうと俺に拒否権はないのである。親族一同暗黙の了解、赤司家には逆らうなの精神に基づき、俺は中学二年生という微妙なお年頃の男の子との同居を始めるにあたって、まずは部屋の片付けからやってしまおうとごみ袋を手に取りながら決意するのであった。
(どんな子なのかなー、おっきくなってんだろうなあー、可愛いげがあるといいなああー…)
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