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赤司兄弟へのお題



赤司兄弟へのお題:(わらえ、わらうんだ)
モブちゃんがでしゃばる




「あのね、赤司君」
「ん?なに?」

きゅ、と音を立てながら黒板消しを横にスライドさせる。日直の仕事は些か面倒ではあるけど仕方ない。後ろで日誌を書いていた同じく日直の女子が口を開く。

「わたしね、赤司君のお兄さんが好きなんだけどね」
「…へえ、そうなんだ」
「この間、見ちゃったの」

突然何なんだいいから早く手を動かせよ君が終わるの待ってわざとゆっくり掃除してるんだけど?とは思っても顔に出さずに優しく「何を?」と問い掛ける。数秒の躊躇いの後に「赤司君達が、抱き合ってるところ」なんて言われたって、俺の表情は崩れない。

「ふぅん?」
「…そんなに、兄弟で仲がいいの?」
「いやいや、普通だって」
「そんなわけない」
「?」
「だって…二人、キス、してたもの」

思わず振り返ってその女子を見つめる。膝で拳を作りながら俯いているその子に舌打ちをしたい気分だ。言っておくけど、俺たちはそんなに迂闊じゃない。それなのに見たなんて言ってるってことは、こっそりひっそり大分周到に覗いていたんだろう。

「そんなわけないよ」
「…え?」

自分でも驚くくらい軽い声が出た。案の定驚いた様子のその子が顔を上げると同時に口が回る。「確かに兄弟仲はいいけど、キスねぇ。多分君が見たのは俺がちょっと失敗しちゃって落ち込んでたのを征十郎が慰めてくれてたところだと思うんだけど、征十郎は良き兄として弟を励ますために背中を叩いたりしてくれただけだよ?まあ抱き合うって言うより頑張れって感じの激励だったし、キスも何かの見間違いじゃないかな。だって兄弟だよ?普通に考えてよ、ないでしょう?」ついでに張り付けたみたいな笑顔で「未来の彼氏かもしれない人にそんな疑惑をかけたって君が悲しくなるだけだよ」と言ってやれば、その子は照れ臭そうに笑って「やだもう。そうだね、変なこと言っちゃってごめん」と言って席を立つ。その手に日誌が持たれていることを確認して俺もチョークまみれの手を払った。
職員室を出て女子と別れ、ふらふらとトイレに入る。軽く口を濯いでも、ちくちくと刺した言葉の棘は取れずに胸を焼くものだから手に負えない。ただわかっているのと自分の口で言うのとはこんなに訳が違うんだな、とどこか他人事のように考えた。



(わらえ、わらうんだ)

(それでも君が好きなんだから)





多分双子はこんなにネガティブにならない(^q^)







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