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赤司兄弟へのお題



赤司兄弟へのお題:変換はお手の物です(お題ったー)





「あ、征十郎だ」

長机とパイプ椅子が置かれた殺風景な教室が並ぶその中に、ペンを片手に真っ白な紙に向かう征十郎を見つける。ちらりと寄越された視線はすぐに戻され、その手はさらさらと文字を書き始めた。

「またメニュー考えてるの?」

征十郎の向かい側に椅子の向きを替えて座り、その手が生み出す文字の羅列を逆さまの位置から目で追う。
一人ひとりの名前から始まる個人メニューの中に、黒子テツヤの文字はない。
ぼんやりと紙が埋まっていくのを眺めていたら突然征十郎の手が止まり、何事かと思えば溜め息を吐きながら「邪魔だ」とか言われてしまった。

「えー、酷いの」
「そんなに見られていたら集中できない」
「あっはは、ごめんごめん」
「出ていけ」
「やーだよ」

征十郎の顔を見ないまま、体を椅子ごと回転させて正しい方向に向き直る。刺すような視線の後はまたペンを滑らせる音が聞こえてきたので、ほっとして瞼を下ろした。
暗闇の中に混じるのは負の感情だ。全てを掌握する力を持っていながら、たった一人の部員すら守れなかった事実を今、ありありと突き付けられている征十郎の。
手を差し伸べたって取ってはくれないだろうから、せめて寄り掛かれるようにそこにいてあげたい。出ていけだなんて言葉を、そんな顔して言うくらいなんだから。




変換はお手の物です

(行かないでなんて言えないだろうから)







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