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夏目



(友人帳)




「聞いたぞ夏目、熱があるにも関わらずふらふらと歩き回った挙げ句森の中でぶっ倒れたんだって?」
「いや、それは…その」
「いくら夏目がお人好しって言ったって、自分の身体壊してたら意味ないだろ。妖怪のために頑張るのはいいけど、それはいいけど。でもさぁ」
「…うん」
「妖怪に襲われて怪我するとかそんなのよりずっと、夏目が夏目のせいで苦しんでるのが堪えられない。お願いだから、俺の夏目を痛め付けるような真似しないでよ。いくら夏目でも、夏目を苦しませるなんて俺が許さない」
「うん…なまえ」
「寝ててよ、寝て早く良くなって。じゃないと…」
「なまえ、ごめん。ごめんな。泣かないで」
「…夏目のせいだ」
「ああ、知ってる」
「…もう二度と、こんなことすんな…」



怪我をして帰る僕にいつも呆れたように怒りながら手当てしてくれる君が初めて見せた涙はとてもあたたかくて、抱き締めた身体は頼りなくちいさく震えていた。時折聞こえる押し殺した嗚咽に鼻の奥がつんとして、ああ愛しいと、ただただそう思った。







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