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帝光時代



「……あふ」

今日はどんよりと暗い雲が空を覆い隠していた。一時間目の国語の授業を何とか眠らずに堪えたものの、ただひたすらに眠い。というより、身体がまだ起きていないようで脳みその指令に答えてくれない。ぶらぶらと力無く揺れる腕に眉を寄せながら更衣室へと向かった。

「よりによって体育かー…」
「昨日、遅かったんですか?」
「いや、いつも通りに寝た。なんか天気悪いと力出ない」
「頑張ってください。今日からバスケですよ」
「うわ…バスケとかまた重いものを」
「重いでしょうか」
「ボール、重い」


適当にランニングを終えて次はシュート練習のようだった。各々ボールを持ちゴールへと放つ。流石に止まった状態でなら外さずに決める奴も多かった。ちなみに、テツヤはもちろん外している。

「…入りませんでした…次、なまえ君です」
「ドンマイ。いってきー」

外の曇り空に負けないくらい暗いオーラを放ちながら戻ってきたテツヤに苦笑を向けながらボールを受けとる。何度か床に打ち付けて、軽く構えた。

「ほっ、……?」

綺麗に決まったシュートだったが、不思議な違和感に首を傾げる。何となく今、視界に何か写ったような。

「ナイッシューです、なまえ君。…行きましょうか」
「ああ、うん…へ?どこに?」
「先生、なまえ君の具合が良くないので保健室へ連れていきます」
「うおっ!?お、おお、黒子か…なんだ、大丈夫か?無理するなよ」
「え?」
「はい。なまえ君、行きますよ」
「うん?なに?」





未だに目を白黒させているなまえ君を連れて体育館を抜け廊下に出る。こめかみを押さえながら、なまえ君と視線を合わせた。

「なまえ君、ふらふらしてましたよ。気付いてないんですか?」
「ふらふら?何だろ……あ、」
「?」
「確かに、目眩がするかもしれない」

ぴたりと立ち止まってじっと地面を見つめたなまえ君は、大真面目な顔でうんきっとそうだと一人頷いていた。溜め息を吐きたくなるのを必死に堪えて、ポケットから携帯を取り出す。

「?テツヤ?」
「赤司君に報告します」
「…げ、止めてよ」
「ダメです。どうせ最近お菓子ばかり食べてろくな食事をとっていないんでしょう。赤司君にお説教してもらいます」
「うわー、なぜバレてるし。そしてほんと止めて…あいつ絶体授業中でも抜けてくる…!」
「あ、逃がしませんよ?明日からテスト期間で部活ないんですから、今逃げたっていずれ捕まりますし」
「えっ…テストだっけ」
「はい」
「忘れてたな」

メールを終えてぱたりと携帯を閉じる。とりあえずこれで報告は済んだし、保健室へと歩みを進める。「あーチカチカする」と目を瞑って歩き始めたなまえ君の手をしっかり握り直して、うっすらと微笑んで見せた。



(………!?)
(目なんか閉じてるからですよ)
(えっ、おま…キっ、うわ)
(ほら、暴れたら倒れますよ)
((えええええ!!))



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