小説 | ナノ






(赤司君のお兄ちゃんA)



何やら校門付近が騒がしいと思ってそちらに視線を向けてみれば、人だかりの中心でへらへらと笑っている人物が目に入る。思わず固まって視線を逸らせないでいると、こちらに気付いた兄さんがひらりと手を振った。何をやっているんだ。

「やあ」
「…まだ授業が残ってるんだけど、何の用かな」

昼休みはもうもうすぐ終わりになる。手短に話して欲しくて急かすように視線を向けたら、いつも通りの食えない笑顔を向けられてしまった。

「相変わらず冷たいなぁ。兄さん悲しいぞ!」
「そうかい」
「やーだーなー、そんな目で見るな我が弟よ。じゃあ本題だ、今週末空いてるかい?」
「…何時も通り部活だが」
「そう、良かった。じゃあ家に帰ってきなさい」
「部活だが」
「福部先生がお見えになるからご挨拶しろとの申し付けなんだよ。まさか、無下になんてしないね?」

古くからお世話になっている茶道の家元の先生の名を出した兄さんの笑みには、先程とは打って変わってふざけたような色は見られない。まったく、いつもそうしていればいいのに。

「…兄さんは同席しないのかい」
「生憎その日は模試なんだ!寂しい?寂しいのか征十郎、ごめんな、兄さんが不甲斐ないばっかりに…!」
「おい」

何のスイッチが入ったのか、僕に抱き着いて泣き(真似を)始めた兄さんに思わず思考が彼方へと飛んでいきそうになる。わざわざそれを伝えるために来たと言うのか。メール一本で済む用件を、わざわざ。

「…兄さん…もう授業始まるから行きたいんだけど」
「えーやだやだサボっちゃえよ。久々の兄弟の触れ合いなのだから」
「僕の記憶が正しければ三日前にも会っているんだが」
「うん、だから久々だろう?」
「……………」

絶句した。
弟に非行を進めてくる兄に途方に暮れながら、どうやって沈めてやろうかと握った拳は兄さんの手にやんわりと阻まれてしまうことになる。



(僕も大概甘いな…)
(ああ、征十郎の学舎見学でもしようかな。こんな時のためにここの教師達とはパイプを繋いでおいたんだ)
(……なに)
(特にあれ、白金先生はよかったなー。渋くて大人の魅力満載、かっこいい!惚れる!)
(……(イラッ))
(あれー?征十郎?行かないのかい?)




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