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征十郎の膝の間に座り、征十郎がページを捲る様子をじっと見つめる。背中に感じる熱と沈黙が心地良くて、俺の体は緩みきっていた。

「…………」
「…………」

征十郎は本を読んでるけど俺は何をするでもなくぼーっとしている。ただ視線が忙しなく指の動きを追っているだけで。少し暇になって真横にある腕に頭を乗せてみたけど、別に嫌がられなかったのでそのまま頬擦りした。俺より筋肉のついたそれを羨ましいとは思うが、纏う努力の二文字にまあ別になくていいかと完結させる。察した征十郎がぐりぐりと腕を押し付けてきた。頬の内側が歯に当たって、地味に痛い。

「ひゃふへ…」
「人間の頭は重いんだ、あまり乗せているな」
「ひゃーい」

そのまま喋れば間抜けな声が出たが、気にしないままぐるんと首を回して自分の膝に額を乗せる。首回りの筋肉が伸びる感覚に口が歪めばついでに欠伸も出てきた。



「…くぁ」

脚の間で小さく震えたなまえは欠伸でもしたんだろう、浮かんだ涙を膝で拭おうと頭を揺らしていた。ぱさりと揺れる髪に隠れることはなく、惜し気もなく項が晒されている。眼下に広がるなんとも色欲をそそる光景に、欲望に忠実に舌を這わせてみた。「ひぎゃ」と色気のない声が飛ぶ。

「? 征十郎?」
「うん」

なまえが頭を上げる気配を察知し、手で頭蓋骨全体を掴むように押さえながら傍らに本を置く。特に抵抗が見られなかったのは単純に構ってもらえて嬉しいからだろう、何をされるかまでは考えが及ばないのがなまえだ。

「ん、」
「え…う、わっ、」

尖らせた舌先で浮き出た背骨を舐め上げて行く。白い肌に僕の唾液が乗る様は酷く気分がいいもので、何度も何度も舌を滑らせていればなまえの肌が粟立った。不快感からくるものではない、快感によるそれもじっくりなぞるように舐めていけば引き攣った声が上がる。「やめて」と発音された言葉は震えていて、非常に征服欲を掻き立てられるものだった。

「ぅぁっ」

最後に唾液を回収する意味を込めてぢゅっと吸い付いて見せれば、なまえの肩が大袈裟に跳ねる。頭に添えていた手を離してやれば僅かに顔を上げて、それから再び膝を抱える形に戻った。

「…急にやめて、くすぐったい」
「すまない、美味しそうだったからついね」
「意味わかんない」

はああと盛大に溜め息を吐いたなまえを後ろから抱き締める。膝裏に回した手に「苦しい」とクレームをつけられたが、嫌がる様子も見せなかった。



先程よりも密着した熱にアドレナリンが分泌されるのを感じながら、我ながら単純だなと頭を振る。内臓を圧迫するような苦しさと相まって考えることが面倒になった俺は、されるがままに首を噛まれていたのであった。




(あー、なんか全体的に赤くなってる気がする…)
(歯形は付けてないよ)
(…それはどうも?)


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