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帝光時代





「いたいた」

屋上へと続く階段を上っていけば、ドアに寄り掛かりながらクッキーを頬張る敦を見付けた。静まり返っている空間にお菓子を噛み砕く音だけが響いていて、見付けるのはそう難しくない。

「んー?どしたのー」
「それはこっちの台詞だよ。堂々とサボり?」
「だって英語だりぃんだもん。てか、なまえちんもサボりじゃん」
「俺は体調不良ってことになってるから」
「一時限目からー?」
「そうそう」

俺の隣に座ったなまえちんは、何が面白いのか笑いながら手に持っている紙袋を揺らした。カサカサ鳴るそれが気になってじっと見つめていれば、視線に気付いたなまえちんがそれを高く掲げる。

「ほんとは朝渡そうと思ってたんだけど、バスケ部朝練長引いてたから渡しそびれちゃって。やっぱり早く渡したかったからサボっちゃった」
「…くれんの?」
「うん。敦、誕生日おめでとう」

手のひらに乗せられた袋からは甘い香りが漂っている。いつもより柔らかい、お母さんみたいな笑顔で渡されたそれに嬉しくなって、袋を落とさないようにしながらなまえちんにぎゅうって抱き着いた。

「嬉しー、ありがと」
「どういたしまして。今日はもうたくさんお菓子もらえたみたいだね」
「んー、赤ちんからもミドちんからも黒ちんからもいっぱいもらえたー」

なまえちんは、お日さまみたいなあったかい匂いがする。ちっこいからあんまり強くぎゅって出来ないのが残念だけど、さっきの笑顔も合わせればそんなことはどうでもよくなってきてしまうくらいだ。

「あと、もうひとつね」

「お菓子はみんなからも貰えるだろうから」と言って伸ばされた手が俺の髪を持ち上げる。不思議に思ったけどそのまま動かないで見ていれば、軽く髪を引っ張られる感覚がして眉が寄った。

「はい、できた」
「…?なにー?」
「髪ゴム。敦、部活中髪邪魔そうだから。気が向いたらつけてね」

首がすーすーすると思ったら髪を縛られたらしい。ほどいてどんなゴムなのか見たかったけど、せっかくなまえちんが結んでくれたからそのままにすることにしてもう一回お礼を言った。

「俺なまえちん大好きー」
「あはは、俺も敦好きー」

いつもは赤ちんに邪魔されるけど、今は授業中だからそんなこともない。なまえちんの頭に顎を乗せながらチャイムが鳴るまでまったりと過ごして、二限目もサボりたいとぼやいたら怒られてしまった。なまえちん、ふざけてるのか真面目なんだか分かんない。





(さて、戻ろうか)
(えー…次なんだっけ…あ、体育だ)
(俺数学だったかなあ)
(…なんか今日頑張れるかも)
(へえ、体育なのに珍しいね)
(なまえちんのゴムあるからね)
(ふは、それは嬉しいなあ)



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