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(弟主)



「うー、寒!」
「まあ、暑くはないね」

朝出るときは燦々と輝く太陽が茹だるような暑さを演出していたのに、午後になり急に曇ってきたかと思えばひんやりとした風が吹くようになっていた。暑さが苦手な俺はいつも通りに半袖のシャツで登校してきたため、あまりの温度変化についていけない。おまけに今日は征十郎の部活が終わるまで待っていたため、すっかり日も傾いた今の時間は大分辛かった。

「征十郎は運動したから寒くないかもしれないけどさあ…」

自分の体を抱くようにしながらぶつぶつと呟くように不満をたれる。呆れたように片眉を上げて征十郎がこちらを振り返った。

「そんなに寒いかい」
「寒い。夏服に移行するにはまだ早過ぎた」
「昨日までは散々暑い暑いって言ってたよな」
「…まあね」

肩を竦めながら歩みを止めずに征十郎の横を通りすぎる。先程から鼻の奥がぐずぐずいうし、もしかしたら風邪引いたかもしれない。嫌すぎる。

「…まったく」

ティッシュはないかとカバンを漁っていると、征十郎のこれ見よがしな溜め息が聞こえてきた。不思議に思って首だけを後ろに向ける、と。

「わ、」
「ほら、着て」
「んー…?」
「風邪引きたいのか」
「いや、引きたくないけど…ジャージなんか持ち歩いてたの?」
「練習の後に体を冷やすわけにはいかないからな」
「ふーん。……」
「汗くさくても我慢しろ」
「…征十郎の匂いする。好き」

ふわりと掛けられた征十郎のジャージに、お前が風邪引くんじゃないのと思ったけどそれは言わないことにした。征十郎なら風邪菌に負けたりしないだろう。いそいそと袖を通せば心地いい温もりが訪れてふっと目元が緩む。
すんすんと匂いを楽しんでいたら、お前は馬鹿かと頭を叩かれた。


(えっ、いったい!)
(嗅ぐな、気持ち悪い)
(気持ち悪い!?ひど!!)



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