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(赤司君のお兄ちゃんB)


ぱし、と腕が掴まれる。

「……」
「征十郎?」

可愛い可愛い弟の征十郎を引き連れてバスケ部の部活動を見学しに行き、渋い雰囲気がとても僕好みの白金先生と隅のベンチでお茶を啜っていたらあっという間に新幹線の時間になってしまった。一言掛けてから出ようかとも思ったが、真剣に練習する姿に遠慮しようと思いそのまま立ち上がる。校門まででも送ってくださるという先生の好意だけ受け取ることにして、体育館の扉に手を掛けた。
というところで冒頭に戻るわけなのだが。

「どうしたんだい、練習に戻りなさい」
「…帰るのかい」
「ん?ああ、……はっ、もしかして黙って帰ろうとした兄さんに寂しさを感じているのかい!そうか、そうなんだね征十郎!ごめんよ…兄さんが至らないばっかりに…!」
「違う!」

感極まって両腕を広げたところで征十郎の声が飛んでくる。思ったより大きかったそれに隣にいた先生は少し驚いた様子でいたが、僕には日常茶飯事的声量だったので構わず「何が?」と聞いてみた。おやおや、他の部員まで注目することはないのにね、練習したまえよ。

「いやあ、兄さん嬉しいよ。そんなに愛されてるなら明日の学校サボってしまおうかなぁ」
「だから違うと言っているだろう…!」
「あは、征十郎は照れ屋さんだなあ!」

今にも唸り出しそうな弟の姿に愛しい気持ちが込み上げてくるのに比例して、体育館の温度は段々と冷たくなっていく。泣く子も黙るキャプテンが怒っていて、その怒りを受けている知らない人間がヘラヘラ笑っているのだから当然かもしれないが。

「まぁ冗談はこれくらいにして。そろそろ本当に間に合わなくなってしまうから行くよ」

未だ鼻息荒く僕を見てくる征十郎に笑いながら腕時計を確認すると、いよいよ切羽詰まってくる時間になっていた。二分読み違えたことに反省しながら無意識に征十郎の頭を撫でてそのまま手を振る。「それでは、弟を宜しくお願いします」なんて常套句で締め、何時もより歩幅を広げて歩き出した途端、僕の世界に色取り取りの花が咲き乱れた。

「…明日朝一の新幹線でも、学校には間に合うだろう」

僕の弟マジ天使。



(ざわ…キャプテン…ざわ…)
(もう僕今なら死ねるよ。征十郎、可愛いって罪だね)
(知るか(ああああああくそ!なんであんなこと!あんなこと!))
(赤司はずいぶん可愛い一面があるんだな)
(…(監督まで…終わった…))
(鼻血出ちゃいそう!)






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