ホラー・チルドレン 平日の昼過ぎに重い腰をあげ大学へと向かうため部屋から出ると、骨董アパートの前で崩子ちゃんと姫ちゃんがしゃがみこんでいた。 「二人で何してるの?」 二人共背中しか見えなかったので、後ろから覗き込んでみた。 蟻を潰していた。 覗かなきゃよかった。 「あ、お兄ちゃん」 「師匠、今日は早いですね」 崩子ちゃんは相変わらず無表情で、姫ちゃんもいつも通りの笑顔で応えた。 こちらが何と応えればいいのか悩むのだが……。 というか、姫ちゃんは僕のことをどれだけ堕落した人間だと思っているんだ。 これでも学生だぞ。 大体合っているけれど。 「やぁ、こんにちは。今日は二人仲良く害虫駆除かい?」 「言い方は爽やかなのに、それが何だか気持ち悪いなんて、さすがはお兄ちゃんです」 「はは、ありがとう崩子ちゃん」 「誉めていません」 真面目に返されて少しだけしゅんとする僕。 「今日は大学行くですか?」 「きちんと出席するのが学生の勤めだからね」 「単位が足りてないですね、師匠」 なぜわかった。 「姫ちゃんだってただのお馬鹿さんじゃないのですよ!ふはははは!」 高らかに笑う姫ちゃんだった。 「まあ、姫ちゃんが自分でも馬鹿だって認めているのは置いといて」 「はっ!しまった、姫ちゃんとしたことが…温かったです…!」 「それはわざとだろ、姫ちゃん?」 「何がですか?」 きょとんとする姫ちゃんだった。 わざとじゃないぞこの子…! 「では、私たちはクロアリ殺しに勤しむので、いってらっしゃい、お兄ちゃん」 「言っちゃったよこの子!」 「師匠、いってらっしゃいですよー」 「…………」 最近の子供は恐ろしい。 |