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プシュっといい音がしてアルコールの匂いが漂う。

「あ、幸村くんアルコールの匂い大丈夫?」

「うん平気だよ。じゃあ通話始めるね」

ボタンを押すと、続々とレギュラー陣が参加してくる。
何人かはやはり寝てしまっているようで、参加者は柳、柳生、丸井、仁王、そして私と幸村だ。

『精市、なぜこのようなことを?』

「たまにはいいじゃん、ね?名字さん」

「今そこで私にふる?あ、ちょっとお菓子とってくる」

『名字いるのか?参加してないみたいだけど』

「ああ、今名字さんの家にいるんだ」

『『『はぁ?!』』』

『幸村だけずるいナリ』

「ずるいって言われてもねぇ」

スピーカー設定にしているので、幸村がいる場所からキッチンが少し離れているけれど仁王たちのびっくりした声が届いてきた。
幸村は本当にドッキリが大好きみたいだ。

見た目はまったく中学生ではないのにこうやって悪戯を仕掛けたりするところはかなり年相応。可愛いね。

それから今日の夜ご飯の話だとかをして結構時間も経ったかな?と思ってふと時計を見ると日付が変わる5分前だった。

『今日で最後かもしれねぇのに、名字とまともに話できなかったなあ』

『そうですね、大会後もすぐに帰ってしまいましたし』

丸井がぼそりと呟いた言葉で楽しかった雰囲気が一気にしんみりとなってしまった。

私の隣で肩を震わせながら声を殺して笑っている神の子以外。

さて、お酒の缶も空になって本当に20歳の私とさよならだ。
1つ2つ深呼吸をする。
きっと彼らとならこの世界でも生きていける。
ごめんなさいお母さんお父さん、そして友達。
私はこの世界で生きてみたいと思ってしまいました。
許してください。

「また明日会える!いつもの集合時間8時にテニス部の部室で!」

答えは聞いてない!と言わんばかりに通話終了ボタンを押す。
時計が0時を指して、日付が変わった。
特に体やなんやらに異変を感じることはない。半分酔っていたのがなくなったくらいだ。

「何か変だと感じることはない?大丈夫そう?」

「なんだろ、若くなったからか少しだけ体が軽い…?」

「それくらいなら大丈夫そうだね…。初めまして15歳の名字さん」

「初めまして幸村くん」

後悔がないと言ったら嘘になる。
でも、この世界で生きていくと決めたから。
みんながいればきっと大丈夫。

テニス部員みんなが驚いて、赤也が泣きながら抱きついてきて、柳の開眼を間近で見れるまであと8時間。