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戻る方法を伝えたあと幸村の顔を見るのが怖くて思わず俯く。
この世界に残ることを決心したのに、やっぱり戻れって言われたらちょっと立ち直れそうにない。

「……っ、」

視界が歪んできて、ポロポロと涙がこぼれ落ちてくる。
なんで泣いてるんだろう。
泣くつもりなんてないんだけど。
幸村に拒絶されたら、と思ってしまったら自然と涙が出てきてしまった。
私はこんなに幸村が好きなんだ。
止まれ止まれと心の中で呟いて涙を止めようと努力するけれど、無理。

「名字さん」

俯いていた私の視界が地面から幸村の顔に変わる。
俯いていた顔をグイッと前に向けられたのだ。
しゃがんで私に視線を合わせてくれている。

「名字さんが泣いてるの見るの合宿以来2回目だね」

「その節はお世話になりました…」

「俺には名字さんが必要なんだ。明日、君も一緒に全国制覇をしてほしい。高校は立海のつもりだろ?高校も一緒にテニス部として全国目指そう?きっと他の奴らも歓迎してくれるさ」

「うん、」

「とりあえずは、目先の決勝だけど…。夜は名字さん家に行くから一緒に過ごそう。そばにいてあげるから。今度は俺が君を支える番だ」

「ありがとう、」

「グループ通話するのも楽しそうだね、日付変わる頃に真田は寝てそうだけど」

「うん、」

「俺たちは君を拒絶なんかしたりしない、俺たちを選んでくれてありがとう。」

ふんわりと微笑む幸村は神の子と呼ばれるのにふさわしい顔をしていた。
久しぶりにこんな風に笑う幸村を見た。
ここ最近はずっと三連覇だ常勝だと空気が張り詰めていてしまったから。

幸村のこの言葉を聞いて、ブワッと涙が出てきてしまい、手を広げてくれた幸村の胸で久しぶりに声を上げて泣いた。

ずっと背中をさすってくれた幸村の手はちゃんと暖かかった。