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わたしもあなたも光に還るの



!似非関西弁しかない
!未来捏造
!U-17合宿無視

引退とはこういうことを言うんやなと思った。

私は美術部に所属しとって、作品を作り上げ次第引退をすることになっている。自分で引退時期を決められるのだ。もっと言うたら、心の整理をつけてから引退することができる。
心の整理をするほど思入れがあるかと言われたら少し困るけど、少なからず悲しみはあると思う。

なぜそんなことを考えとるんかというと、全国大会に駒を進めた男子テニス部が準決勝で負けたと聞いたから。
公立の中学が全国大会に行っただけですごいというのに準決勝まで行っていたなんて。
その話を聞いたのは美術部の部室…美術室やった。
今日は外の景色を描きたい気分やったから、ふらりと部員との話題に上がっていたテニス部がいるであろうテニスコートに引き寄せられるように向かった。

そこには、2年生と1年生しかおらんかった。
3年生はどこ行ったんやろうと思ったけど、友人の言葉を思い出した。

『準決勝で負けた』

ここで冒頭の感想に戻るわけや。
テニスが大好きなことで有名な人たちやったから、引退してもおるやろうくらいに考えとったけど、そんなことなかった。
テニスコートの中には2年生と1年生しかおらん。3年生は誰1人としておらんかった。

「みょうじさんや」

「白石や」

「テニス部の誰かに用?」

「いや、今日はスケッチ。人が少ないテニス部って不思議やなって思ってた」

「せやなぁ、俺らもう引退したしなぁ」

「なんか、すごく切なくなったんよね。こうやって"代替わり"するんやなって」

毎年毎年…とは言っても去年と一昨年だけやけど、先輩が引退するのは寂しかった。
卒業したわけやないから学校では会えるんやけど部活では会えんってなったら寂しかった。
先輩たちはみんな優しくて、素敵な作品ばっかり作っとってずっと憧れやった。
今いる後輩にとって私はそんな存在でおれたんやろか。
引退が寂しいって思ってもらえてるんやろか。

「俺もな、心配でついつい来てしもたんよ。でも、あいつらの姿みたら大丈夫やなって思った。きっと来年も全国行ってくれるって思えた」

「うん、」

「あいつらは不安で仕方ないんやと思う、俺もせやったし。でも、今は俺らに四天宝寺テニス部を任せてくれた先輩たちの気持ちがわかってなんか不思議やわ」

そう笑う白石の笑顔は眩しくて、今まで見てきたどの笑顔よりも素敵やった。

「わかるわかる、私もなんか引退を目の前にしてるから不思議な気持ち」

「美術部はいつなん?」

「作品を作り上げたら、かな」

「そっか、いい作品できること祈ってるな。じゃあ、また」

「うん、またね」

美術部3年生の引退作品として、私の作品が廊下に飾られるまであと数週間。
きっと、私の気持ちに整理はついているはず。
きっと、笑顔で引退できるはず。
白石が笑っていたように。