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- ナノ -

03
お弁当箱を見放してからはや数時間。
もう放課後である。
私のお弁当箱はどこに行ってしまったんだろう、新しいお弁当箱買って帰ろうかなって思ったりもして。
でも、お母さんになんて言い訳すればいいのだろう。
ぐるぐるとそんなことを考えていると知らないアドレスからメールがとどいた。

かなり長いメールだったが、まとめると「放課後テニス部の部室に来い」ということだった。
御察しの通り、相手は幸村である。
どこから私のアドレスを仕入れたの?と思ったが、あの柳が彼の味方についているのならなんの疑問も浮かばない。
個人情報だからやめてほしいんだけどな。
悪用されないならまあいっか。

さて、放課後に呼び出しをくらったわけだが、どうするべきなのか。

部室棟はファンの暗黙のルールで近づかないってことになっている。
応援するのはテニスコートの周りだけ。
そんな謎のルールがある。

お弁当箱はもういい。新しいお弁当箱を買って帰ろう。
雅治を晩御飯に誘えと言われていたけど、無理だ。仁王家の玄関のドアにでもメモを貼っておけばいいだろう。

いつも通り校舎を出ようとしたところで幸村くんに捕まった。

「やっぱり柳の予測は当たるね」

「えっ?」

「柳が、『みょうじが連絡を無視して帰る確率95%』って」

柳くんのその確率はどうやって計算しているのかめっちゃ気になるんですけど。

「私は話がないので、失礼します。」

「俺にはないかも知れないけれど、仁王にはあるんだろ?」

「なんとかするんで大丈夫です。」

「お弁当箱は?」

「差し上げます。」

このまま話していては拉致があかないと思ったのか、そっと耳に口を近づけて、仁王のことを雅治と呼んでいたことを仁王ファンクラブにバラすと囁いてきた。

それは避けたいものなのだけれど、雅治なんて名前の人間このマンモス校にもう1人くらいいるだろうし、幸村くんがなんと言おうと私みたいな地味な女の子が仁王のことを雅治なんて呼ぶわけないと全人類が納得するだろう。

「気にしないのでもう付きまとわないでください。失礼します」

「なまえ!」

「「えっ?」」

後ろから呼ばれて振り返ると、久々に前からちゃんと見る雅治がいた。
幸村も驚いてわたしと同じように変な声を出していた。
雅治の手にはお昼に幸村に人質に取られたお弁当箱があった。

「これ、おまんのじゃろ。部室にあったけん持ってきた」

「ありがとう…あっ、お母さんが、」

「終わったら行きますゆうとって」

「うん、わかった」

そう答えると、幸村に何か囁いてから部室棟の方へ戻って行った。
幸村はなんだかオモチャを見つけた子どもみたいな顔をしていてこわい。
雅治は何を言ったんだろう。

「俺が思ってるより面白い状況だね。俺はこれで失礼するよ。また明日ね」

ニコリと笑って部室棟へと戻っていった。
なんだかヤバイ予感がする。