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- ナノ -

02

「ねえ、みょうじさん。」

「幸村くん…」

「いま、雅治って言った?」

「言ってないデス」

「本当に?」

なぜ私はこんな状況に陥っているのだろう。
ダレカタスケテー!!

少しだけ時間を遡ってなぜこのような状況になったのか整理させてほしい。
事の発端は母親からの電話だった。

今日は由美ちゃんが委員会だということでお昼ご飯は1人寂しく屋上でお弁当を食べていた。
学食が人気ということもあるし、屋上にベンチがないということもあってあまり人気が少ない。
美化委員が管理している庭園があるのは少しだけ不思議だったりする。
ここまで肥料とか運ぶの大変そうだなぁ、なんて思いながら母が持たせてくれたお弁当を頬張っていた。

そんなところに母から携帯に電話がかかってきた。これが今回の事件の原因だ。
この電話さえなければ幸村くんバレることなんてなかったのに。

「もしもし〜〜?」

「なまえ?あのね、今日、仁王さん家に雅治くん1人なんだって。だから、晩御飯に誘っておいてね〜」

「えっ?!なんで?仁王さん家お出かけなの?!」

「雅治くん1人じゃちゃんとご飯食べないからよ。あんたが一番早く雅治くんに伝えれるんだからよろしくね」

「ちょっ!雅治とは中学入って話してないし、クラスだって違うから!」

「なんとかしなさい。じゃあ、頼んだわよ」

「まっ…!切れたし…。雅治と話とか無理に決まってるじゃん…」

結局、なぜ仁王さん家がお出かけなのか教えてくれなかったし。
書き置きくらいして行ってくれよ仁王さん…。
話しかけるかけないはおいておいて、腹が減っては戦はできぬ。とりあえず腹を満たすことから始めよう。

そう思って再びお弁当にお箸をつけたところで屋上庭園に人影が見えた。
これはまずい。興奮していてかなり大声で話してしまっていた。
これが仁王やテニス部のとりまきだったら私の学校生活は終わる。
しかし、見えているのは男子の制服だ。
これは勝った。
そう思ったのに、

「みょうじさんって屋上でご飯食べてるんだね」

「幸村くん……」

テニス部部長幸村精市でした。
誰か私を殺せ。

「電話盗み聞きしたみたいになってごめんね」

「あ、いや、大丈夫…です」

「あんなに大声で話すなんてびっくりしたよ」

「大声出してごめんね。あっ私次の授業の準備あるから!」

お弁当をそそくさと片付けて教室に戻ろう、そう思ったのに、いつの間にか近づいていた幸村くんの手によってその作業は実行に移すことができなかった。

そうして冒頭の会話に戻るのだった。

「あ、兄の名が雅治ってい「みょうじさんにはお兄さんいないって柳が言ってたよ」

「しかも、雅治って言う前に仁王さんって聞こえたし。みょうじさんと仁王ってなんなの?」

「なんなの、と仰られましても…。ただの同級生としか…」

「まあいいや、柳に聞けばわかることだし」

そう微笑むと私の弁当を抱えて校舎の中へ入って行った。

何が起こっているんだ本当に。
あのお弁当箱気に入っていたのに仕方ない。
私は幸村くんの背中を追いかけるなんてそんな勇気はない。
ごめんねお弁当箱。さようなら、今までありがとう。