幼馴染とは仲が良いものだとよく思われがちだが、私たちの場合は違う。
性格が真逆な私たちが仲良くできるわけがなかった。
小学校の低学年の頃は母親に連れられてたくさん遊んだりしていたが、学年が上がるごとに話さなくなっていった。
同じ中学に進学した今も同じで、先生に頼みごとなどをされない限り話すこともなかった。
彼は中学受験をしないものだと思っていて、立海に来れば離れることができると思っていたのに、なぜか同じ学校を受験していた。
なぜ?
女子生徒の壁が出来ている所為で見えないが、朝練が行われているであろうテニスコートを横目に教室へ向かう。
彼が所属している男子テニス部は学校のアイドルである。
イケメンが集まっているし、様々なタイプの男子がいるからいろんなファンが付くのだと去年同じクラスだったテニス部のデータマンの柳くんが教えてくれた。
テニス部に幼馴染がいることは一部の友達にしか言っていないのに、柳くんは私の幼馴染がテニス部にいると知って話しかけてきたことにはびっくりした。
今年はテニス部の部長さんと同じクラスなので、かなり女の子がうるさいし、浮き足立っているし、今隣の席だからかなり不安。
「なまえおはよ〜〜」
「由美ちゃん、おはよう」
教室に入ると数少ない友達の由美ちゃんが挨拶をしてくれた。
由美ちゃんがこのクラスにいてくれるから幸村くんと同じクラスで、隣の席でもなんとかやっていける。
中学最後のクラスがこんなクラスだなんて…と思ってしまうけどね。
高校こそは絶対に誰もテニス部がいないクラスでありたい。
「今日もテニスコートの壁凄かったね」
「ね〜 。どこがいいのか」
「なまえはイケメン幼馴染がいるからそんなこと言えるんだよ?」
「いや、中学入ってから一言も話してないよ」
「嘘でしょ?!幼馴染特権なのに?!」
「だから何回も言ってるけど、私も彼も性格が真逆でしょ?そんな2人が話すことなんてあると思う?」
「ないと思います。」
「そういうこと。私と仁王はもう赤の他人なの」
私の幼馴染はテニス部の仁王雅治だ。