別に期待していたわけじゃない。竜が俺のことを好きになるなんてありえないことだと分かっていた。いつか竜に彼女が出来ることくらい分かっていた。
そのいつかが今日来ただけ。それだけなんだ。

それでも俺は心の準備なんて出来るはずなかった。

その日の夜は静寂の中嗚咽だけが寂しく響いていた。

いつの間にか窓から光が差し込んでいるのに気がついて身体を起こした。頭がひどく痛い。ふらふらする身体で鏡をみるとそこには酷い顔が映り込んでいた。

学校を休もうかと思ったけれど、昨日傘を貸さなかったせいだと竜に心配させたくなかったから準備を始めた。
本当は竜が心配してくれるなんて俺の自惚れかもしれないけど、せめてそう思っていたかった。

学校に着くと真っ先に竜の姿を探した。

まだ冷たい空気の中、グラウンドにその姿はあった。朝練も終えるようで片付けを始めている。

グラブをはずしている竜に駆け寄る子が見えた。長い髪をポニーテールで後ろにまとめている背の小さな子。

一瞬で竜の彼女だと分かった。

見てはいけないと頭では分かっているのに視線を外すことが出来なくて、見えなくなるまで二人の姿を追い続けた。

幸せそうに笑っていた。二人とも…。

背の高くてかっこいい竜と、背の低くてかわいい小山さん。すごくお似合いだ。少なくとも俺なんかよりは…。

亮とかクラスの人から純は可愛いなんて言われた事あるけれど、結局俺は男なんだ。

どんなに足掻いたって、どんなに人から称賛されたって、竜の恋愛対象になることはない。

彼女がしてもらったであろう、竜からの告白なんて…冗談でもあり得ない。

竜が告白してくれる場面を…俺が告白する場面を何度も想像した。教室でとか家でとか帰り道でとか、いっぱい想像した。
でも、どんなに想像したって竜の表情が想像できないんだ。俺の想いを受け止めてくれる姿なんて想像できないんだ。

だって俺はいつまでたっても竜の友達だから。

それじゃ満足できないけど、友達を辞めたくなかったから…出来なかったんだ。




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