学校を後にして、二人は何となく気まずい雰囲気になって沈黙が流れていた。

「純、こうして一緒に帰るのも久しぶりだよな。」

先に沈黙を破ったのは竜だった。

「…うん。」

「中学の頃はいつも一緒に帰ってたのにな。」

「仕方ないじゃん。竜は部活あるんだし。」

そう、仕方ないことなんだ。

「純も野球部入ればよかったのに。純一番野球好きだっただろ?それってすげー才能だと思うけどなぁ。」

俺は苦笑いだけ返した。竜の言葉に皮肉を感じてしまった。

『才能』

…俺に一番似合わない言葉だと思った。野球の才能のある竜と、才能のない俺。そんなこととっくの昔から分かっている。神様はどうやら平等という言葉が嫌いらしい。

「竜の方が野球好きだろ。才能もあって、周りから認められて…俺なんか…。」

「そんなことないって!俺も練習嫌だと思うことあるし、サボりたくなることもあるって。」

竜は笑いながらそう言った。

「竜、今度は県大会行けそう?」

そう言うと今まで笑っていた竜の顔が固まった。そしてそのまま口を閉ざした。再び嫌な沈黙が二人の間に流れる。

「三年までには…引退するまでには絶対に県大会より上に行ってやる。」

そう言った竜の顔は真っ直ぐ前を見据えていた。その表情にすこしだけどきりとした。

「俺、純に言っておきたいことがあるんだ。」

そのずしりとした声に恐る恐る竜の顔を見上げると、竜は紅く染めた顔でこっちを
見つめていた。

「…急になんだよ。改まってなんか竜らしくない。」

俺は笑ってそう言った。いや、笑えてた自信なんてない。きっと今の俺の顔すごいひきつってると思う。

「これ、純だから言うんだぞ。絶対に秘密にするか?」

「竜がそう言うなら…。で、なんだよ。」

「俺さ、野球部のマネージャーと付き合うことにしたんだ。」

紅く熱く染まっていた頬が冷めていくのがわかる。ズボンの裾に雨の跳ね返りが染みていくのが不快だった。

俺たちの上では傘に雨が当たる音ばかりが響いていた。



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