純は高校に入ると野球部に入らなかった。あんなにも楽しそうに野球をしていた純が、だ。

入学当初は何度も誘ったが、純は首を縦には振らなかった。
いつも悲しそうに笑いながら「俺には才能がないから。」と言って俺の誘いを断った。

大好きな純の姿が少しだけ霞んだ気がした。

いやだ。

俺の好きな純はこんな風に悲しく笑う奴じゃない。周りまで明るく照らすように笑う奴なんだ。俺はそんな純が好きなんだ。もう純の濡れた顔は見たくなかった。

だから、もう俺は純を野球部に誘うことを止めた。

俺がそれをすることで純が悲しく笑うのなら、一緒に居られなくても、、、一緒に野球を出来なくても、、、

…いいと思った…。

誘うのを止めてから俺は出来るだけ純のそばに居るようにした。少しでも一緒に居たかったのもあるけれど、やっぱりまだ心のどこかで純が野球を始めてくれるんじゃないかって諦め切れてなかったのかもしれない。

だけど、一緒に居て気付いた。

純が少しだけ竜と距離を置いていることに。

気付いたと同時に純のなかの何かが分かった気がした。それが具体的に何かと言い表すことは出来ないけど、、、分かったんだ。

これで最後の質問にしようと思った。

純は外ばかり見ていた。正確に言うとグラウンドのあいつを見つめていた。

「純は本当に竜のことが好きだよな。」

自然にでた自分のその言葉が辛かった。そして、その言葉に「うん。」と答えた純の言葉が胸に刺さった。でもこの言葉で確信した。

「純が野球辞めたのって竜の所為?」

そう聞くと純は「違う」と答えた。だけど、その表情は明らかに動揺していた。好きな人のために好きなものを諦める。そんな気持ち俺には分からないけど、この時俺は少しだけ竜のことが嫌いになった。


[戻る]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -