窓の外を見るとさっきまで俺のものだったはずの傘が揺れていた。

きっとあの下には純の笑顔がある。俺に向けられるものよりもずっと綺麗な笑顔が…。

いつからだっただろうか。俺が純のことを友達以上の存在として認識し始めたのは。

中学に入って当たり前のように野球部に入った。入ってすぐに一年生は集められて自己紹介をさせられた。そこで聞いたことのあるクラブチームの名前があった。

矢野竜と山崎純…。

なんかデコボコな奴らだ。確かそれが第一印象だったと思う。決して良いとはいえない第一印象だった。

「上手いね。」純はそう俺に言った。その時の笑顔はとても無邪気で今でも思い出すことができる。

その時から俺と純はとよく話すようになって、一緒に居ることも多くなった。

はっきりと言うと俺よりは野球が下手だった。

それなのに、純は俺と同じ位野球を楽しんでいた。そんな純と一緒に野球をするのが面白かった。

だけど、ある日いつも通り朝練に来た時に見てしまった。
竜と純が二人きりで朝練している姿を見たときに俺の心はざわついた。邪魔してやろうと思ったんだ。

結局、純が竜を引っ張って行って再び二人きりになってしまった。俺は自分に言い聞かせるように叫んだんだ。

「恋愛に性別は無いんだ。」って、、、

その日から毎日朝練に来るようになった。でも、二人はいつも一緒に居てなかなか入りこむ隙は無かった。

いつしか俺は純を視界のどこかに探すようになっていた。

そしてあることに気がついた。

俺が純のことを誰よりも好きだということと…。それと…純が竜のことを好きだということ…。

竜が笑えば純も笑う。竜が怒れば純は心配する。竜が隠れて泣けば純は竜の分まで泣く。

竜が…竜が…竜が…。

純のすべては竜のような気がした。

悔しかった。

純のすべてを俺で満たしたかった。

…たけど、いつになっても純は振り向いてはくれなかった。

いつしか俺も一緒に野球さえやれたらいい。そう思うようになっていた。だけど俺の儚い願いさえも崩れた。

高校に入ると純は野球を辞めた。


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