「純、今日一緒に帰ろうぜ。」

いつもと同じように弁当を食べていると突然亮が言った。

「部活は?」

「外見ろよ。」

窓の外には雨に濡れた灰色の風景が広がっていた。雨は今も降り続いている。どうやらこの様子だと放課後も止みそうにない。

「筋トレとかしないの?階段ダッシュとかさ。」

「今日はちょうど先生も出張だから休みだって。この頃休みがほとんど無かったから先生も考えてくれたんじゃね?」

「ふーん。」

…野球部が休みということなら、竜も授業が終わったら帰るんだ。部活の人と帰るのかな…。一緒に帰りたいとは思うけれど少し気まずい。

「なあ、純。帰れるのかよ?帰れないのかよ?」

「あぁごめん。帰れるけど…俺傘持ってきてないよ。」

「大丈夫。こんなこともあろうかと俺はいつも折り畳み傘を持ってきてるんだよ。準備いいだろ。」

「おお、亮にしては準備がいいな。」

「俺にしては、ってどういう意味だよ。まあ一つしかないから相々傘になるけど…別にいいよな?」

「気にするかよ。竜だったらドキドキするかもしれないけどなぁ。」

「…悪かったな、竜じゃなくて…。そんなに竜と帰りたいなら別に無理しなくていいんだぞ。竜も部活休みだしな。」

「亮、そんなに怒るなよ。嘘だって。俺、亮と一緒に帰りたいなあ。」

「本当かよ?本当に俺と帰りたいのか?」

「うん。本当だって。亮と帰るなんて久しぶりだから嬉しいな。」

「まぁ、純がそう言うなら仕方ないな。一緒に帰ってやるか。」

「調子いいなこいつ。」

窓の外では未だに激しい雨が降っている。

放課後、俺と亮は一緒に教室を出た。竜はまだ帰る準備をしているようだった。ちょっとだけ期待していた自分が情けなかった。

「早くいこうぜ純。」

「うん。今行く。」

他愛のない話をしながら靴置き場に向かった。ちょうど着いて靴を出したところだった。

「純!」

自分の名前が呼ばれた気がした。大好きなあの人声で…。後ろを振り返ると確かに予想通りの人物が走ってきていた。

「純。今日俺、部活休みだから一緒に帰ろうぜ。」

思わず勢いよく頷いてしないそうになった。それほどに嬉しかったんだ。

「…でも、亮と帰る約束してるから…。」

亮の表情を窺うように振り返った。傘を取りだした亮が唇を噛んで立っていた。

「俺のことは気にしなくていいぜ。俺やっぱり親に迎えに来てもらうから傘も二人で使えよ。」

そう言って俺に強引に傘を握らせて耳元で「頑張れよ。」と呟いて走って教室の方へ戻っていった。残された二人は呆気に取られていた。どうやら亮は気を遣ってくれたみたいだ。

心の中でありがとうと呟いて傘を開いた。

「行こうか竜。」

開いた小さな傘に二人で入って歩き出した。



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