4限目が終わった後教室は騒がしくなる。

机に弁当を広げて食べ始める人や、学食に向かう人や、購買のパンを買ってくる人、はたまた授業中に間に合わなかった黒板の写しを焦ってしている人など様々だ。

かくいう俺も机に弁当を広げて、窓から見える風景を眺めながら食事をしていた。

そんな俺の前には中学校から顔なじみの亮が売店で買ってきたのであろうパンにかじりついていた。

「なあ、亮。それ一人で全部食べるの?」

「ん?食べるけど…。何かおかしいか?」

「いや、別にいいんだけど…多くない?」

前の席の椅子を借りてこちらを向いて座っている亮の目の前には俺の弁当を埋め尽くすような量のパンがあった。
焼きそばパン、あんぱん、メロンパン、などなど沢山の種類が並んでいる。

背の低い俺とあまり変わらない身体つきの亮のどこにこの量の食べ物が入るのか不思議だった。

亮はそんな俺の考えなんて気にせずに次々とパンを口に運んでいる。俺も弁当の唐揚げを一つ口に含んでグラウンドを眺めた。

この席からだとグラウンド全体がよく見える。今はちょうど野球部がグラウンド整備をしている。

きっとあいつも…。そう思った時だった。

「竜ならあそこにいるぞ。」

「うん…。分かってる。」

そう、俺は亮にすべて話した。男が好きなところも、竜のことが好きなことも、、、全部…。

あの日の亮の言葉が「恋愛に性別なんて関係ない。」その言葉に俺は救われたから…。

亮なら受け入れてくれると思って、、、亮にだけは話そうと思ったんだ。

俺が亮に告白した時亮は笑いながらこう言った。

「別に純が男を好きでも野球は出来るだろ。俺、純と野球するのすげー面白いんだ!」

この瞬間肩の荷が下りた気がした。

「ははっ!やっぱり亮は馬鹿だな。何か俺心配しすぎて損した。」

「馬鹿って言うなよ。せっかく相談に乗ってやったのに何だよその扱い。」

「わかった、ごめんって。ありがとう、亮。亮のおかげで結構楽になった。」

そう言うと亮は少し照れながら誇らしげに笑っていた。

その時は確かに何か解決したと思っていた。でも、その何かは本当は何も解決されていなかったんだ…。



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