「お前よくそんなこと言えるよな。」

竜が顔を紅くしながら呆れているように言った。

「そっか?別に普通じゃね?竜が素直じゃないだけだよ。俺はいつだって自分に素直に生きるのがモットーだからな。」

「素直とかそんな問題じゃないだろ。そりゃあさ、純はちっちゃいし、顔もへたに化粧してる女子より可愛いとは思う。」

そんなことを言いながら竜が俺のことをまじまじと見つめてくる。なんか恥ずかしい。絶対さっきよりも顔紅くなってる。

そんな俺の浮かれた気分は竜のたった一言に崩されることになる。

「だけど、純は男だろ。」

最後のその竜の一言が胸を貫いた。

そう、俺は男で竜も男で、、、

竜の恋愛対象はきっと可愛い女の子で…男の俺じゃない。

今までずっと一緒に居たから気付かなかったけれど、いや、本当は気付かないふりをしていただけなのかもしれないけれど、いつか竜と別れる日が来るんだ。隣を見れば当たり前のようにあった姿がなくなってしまう日が、、、竜が居なくなってしまう日が来てしまうんだ。

「竜、早く柔軟の続きしよう。時間がなくなるだろ。」

亮はまだ何か言っていたけれど、無理やり竜を引っ張ってきた。
きっと竜は俺が何故こんなにも落ち込んでいるのか分からないだろう。そして、分かる日が来ることもない…。

「竜!恋愛に性別なんて関係ないんだよ!」

最後に聞こえた亮の叫びが寂しくグラウンドに木霊した。誰もいないグラウンドにそれはよく響いた。きっと竜は亮の負け惜しみとしか思っていない。
だけど、その言葉は今の俺の胸に深く突き刺さった。

性別なんて関係ないか、、、

亮、やっぱり俺お前のこと尊敬するよ。俺はお前みたいに馬鹿になれそうにないや…。

さっきとは位置を変えて竜の背中を俺が押す。

目の前にあるはずの背中が少しだけ遠くに感じた。


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