今日俺は失恋した。正確に言うと俺が告白する前から、俺が康祐を想った瞬間から失恋したんだ。
最初は何でも出来るあいつが羨ましくて自慢の兄貴だった。
失敗ばかりの俺を守ってくれて、救ってくれた。そんなあいつのことが好きだったのかもしれない…。
でも気付いてしまった。俺がどんなに頑張っても褒められないってことに…。どんなに頑張ってもあいつが上に居るってことに…。
母さんも父さんもクラスメイトも担任も口癖のように言っていた「秀に比べて舜は…。」って。
いつしか俺は諦めていた。
だけど康祐のことだけは諦めきれなかった。小さいころから俺を守ってくれた。俺を見てくれた。俺を求めてくれた。
そんな康祐を俺は諦められなかった。でも、それも俺が作った幻想だった…。
康祐は俺ではなくて秀のことを大切に想っていた。秀を見ていた。秀を求めていた。
俺のことを利用していた。
康祐の心の中の秤も俺のほうに傾いてはくれなかった。
頑張って想いという重りを載せた。沢山乗せた。でも向こう側に秀に乗っただけ。それだけで秤は一気に向こう側に傾いた。
俺が傾けようと必死だった秤は相馬秀というたった一人の人物で傾いた。
俺と同じ顔で、同じ声で、同じ背で、全部同じはずなのに、同じじゃなかった…。
遠く離れていく君の背中に手を伸ばした。いつもギリギリのところで掴んでいた。
でも今回はもう無理そうだ。
どんなに伸ばしても届かないんだ。
君は振り向かずに前へ進む。俺なんか置いていってしまう。秀のところに一直線なんだ。
手を取ってはくれない。
なあ、康祐。お前秀のことどのくらい好き?俺はそれと同じ位お前のことが好きなんだ。いや、それ以上だ。
俺って馬鹿だ。
それから康祐と秀がどうなったかなんて知らない。ただ一つ言えることは康祐と秀の人差指にはあのシルバーリングが光っていた。
-END-