「秀、入るぞ。」
俺は返事がする前にドアを開けた。
そこには上半身だけ起こした秀がベッドの上に居た。その顔は未だに紅潮している。
「秀、康祐から告白されたんだろ?」
もう改まる必要なんてない。
「さっき、隣の部屋まで聞こえた。」
『舜、、、お前は康祐のこと本気で好きだったんだろ?いいのか?』
なに言ってるんだよ。いい訳ないだろ。ずっと好きだったんだ。今でも、、、ずっと…。
もし康祐が俺のことを好きになってくれたらって馬鹿なことを何度も夢見た。何度も願ったんだ。
康祐が俺のことを見てくれるようにって叶わない願いだと分かっていても…そうせずにいられなかったんだ。
「オッケーしたのか…?」
聞きたくはなかったけど、これを聞くまで俺はきっと康祐のことを忘れられないだろうから。
でも返ってきた答えは想像していたものとは違っていた。
『断った。』
秀は俯いている。
「何でだよ!」
『何でって康祐のこと幼なじみとしか思ってないから…。今まで通り幼なじみのままがいいって康祐に言った。』
「なんでだよ…。」
それはつまり、康祐は恋人としての俺より幼なじみとしての秀を選んだってことだろ。
康祐のためなら何だってできる。何でもする覚悟はある。それなのに俺は必要とされなかった。必要とされないのならこんな気持ちなんて意味ないじゃないか…。
「お前よりも康祐のこと好きなのに…。」
お前よりもずっと一緒に居て、お前よりもずっと想い続けたのに、康祐はお前を、、、自分のことを好きになってくれない秀のことを選んだんだ。
『舜、ごめんな。』
「うるさい!謝ったりするなよ。…謝ったりなんか…。」
いつの間にか俺の頬には涙が伝っていた。
俺が秀みたいに純粋だったらよかったのか?俺が秀みたいに頭がよければよかったのか?俺が秀みたいに何でもできたらよかったのか?
その全部を頑張ったんだ。康祐への想いだけは純粋だった。一生懸命勉強もしたし、色々頑張ってきたんだ。そのどれもが秀に及ばなかっただけ…。
ただそれだけ、、、それだけだったんだ。