お前の眼に俺はどう映ってる?
幼なじみ。友達。恋人。いやきっと全部違う、俺は康祐の、、、
「好きな奴の弟」だ…。
康祐は驚いたように俺を見て立ちすくんでいた。やっぱり康祐は俺の気持ちに気付いていなかったらしい。
そりゃそうか俺の努力なんてすべて無視して秀のことしか見てなかったもんな。
「康祐、俺お前のこと好きだ。今までずっと、、、気付かなかったか?」
『…冗談だろ…?』
「冗談じゃない!…ずっと好きだった。自分でも引くくらい康祐が好きだ…。」
馬鹿だよな。こんなこと言っても康祐が振り向いてくれることなんてないのに…。言葉は出てくる。今まで溜めてきた想いが溢れ出してくる。
『ごめん、舜…。俺は、、、』
わかってる。
秀のことが好きなんだろ。そんなの分かってる。分かっているからもう俺は諦めたんだ。
「康祐。今日俺、お前にお土産があるんだ。」
そう言って俺はくしゃくしゃになった紙包みを差し出した。
「これ、シルバーリングなんだ。K&Sって彫ってもらった。いいだろ。」
康祐は包みを受け取らずに見つめている。
「やっぱ迷惑だった?おそろいの物が良いな〜とか思ったんだけど…。」
俺とおそろいなんて嫌だよな。そんなの分かってるさ、そんなこと期待していない。
「康祐、受け取れよ。大丈夫、お前が決めていいからさ、、、」
『…何を?』
「康祐のK&Sは秀とだろ?秀に渡してくればいいさ。誕生日プレゼントだって。秀きっと喜ぶぞ。」
『こんなもの貰えない。』
「じゃあさ、康祐。こっち来てよ。」
康祐は静かに歩み寄った。その瞬間康祐の顔に自分の顔を近づけた。自身の唇に重なる愛しい熱を感じた。
初めてのキスだった。
それは甘くて一瞬で、悲しい味がした。
「俺はこれでいい。」
大丈夫、俺はもう諦めたから。後はお前が俺を捨てれば済むことだ。俺を捨ててくれれば、、、それでいいんだ。
「さっさと秀のところに行けよ!俺より秀のことのほうが大切なんだろ。お願いだから、受け取ってくれよ、、、」
康祐の顔を見ていられなくて顔を下げた。その瞬間手の中にあった感触が抜き取られた。
割り切っていたつもりだけど、どうしても想いは捨てられなくて一瞬だけ力を込めた。だけどそれは遅くて手には何の感触もなかった。
『ごめんな、舜。いままでありがとう。』
康祐はそのまま出ていった。
俺はそのまま顔を上げなかった。こんな顔見せられないから。こんな涙でぐちゃぐちゃな顔なんて見せなれないから。
康祐、お前はいま幸せか…?俺は、、、涙が止まらないんだ…。