あと数時間で俺の誕生日も終わる。今までの中で、一番楽しみで、待ち望んでいて、それでいて最悪だった誕生日が…。
誰にも祝福されることなく終わっていく…。出来そこないにはお似合いな日だった。
隣の部屋ではきっとまだ手を握り合っている。お互いの体温を確かめるように強く、深く…。
部屋の壁は何も言わずにたたずんでいた。
しばらくして隣の部屋でドアを開ける音がした。
『舜、入るぞ。』
ノックはない。ドアノブが回って扉がゆっくりと開かれる。そこに立っていたのは今日一日ずっと隣に居るはずの男だった。
『舜、どこに行ってたんだよ。』
「どこって、今日映画見に行くって約束してただろ。」
『こんな時間までか?』
「お前がドタキャンするから結構待ってて時間遅れたんだよ。」
『それは悪かったけど、秀にあまり心配かけるなよ。俺だって心配したんだ。』
悪かった?そんな言葉で終わるのか、、、俺がどれだけこの日を待ち望んでいたのかお前は知らないだろ。
この日のことしか考えられないほどに待ったんだ。
待って、待ってお前は来なかった…。
「…嘘つくなよ。」
俺の心配なんかしていないだろ。お前が心配してるのはいつだって秀のほう…。
『だから悪かったって。だけど俺が秀のこと好きだって知ってるだろ?秀のあんな姿見たら放っておけないことくらい分かるだろ?』
知ってるさ、お前が秀を好きなことくらい。秀が病気になったら何があっても看病しようとすることくらい、、、だから、秀に会わせたくなかったから待ち合わせをしたんじゃないか。9時に駅前って、、、
それでもお前は秀に会いたかったんだろ?
分かるさ、俺も同じ気持ちなんだ。会いたくて、会いたくてどうしようもない。
好きな人の力になりたいし、力になってほしい。だけど俺の場合お前は俺を求めてはくれなかったし、求めても応えてはくれなかった。
「なぁ、康祐。俺、お前のこと好きだ。」