やっと来た電車に乗って目的地まで着いた俺は一番近くの映画館に入った。
その映画は今話題になっていて、すごく楽しみにしていたはずなのに…、全然面白くない。
ただ音の羅列を聞いて光の残像を見ているだけのように思えた。
退屈な時間が終わるころには館内がざわついて、席を立つ人が目立ってきた。俺は少しだけ遅れて映画館を後にした。
外に出ると真っ先に目当ての店に行った。
本当は服とかも見て、2人で昼ごはんも食べて、一日中2人きりの時間を過ごしたかった。
だけど、そんなの無理だろ?
だって肝心の康祐が居ないんだから…。
俺、今独りぼっちだから…。
握るものがない手でぐっと拳を作った。
向かった店は色々な小物やアクセサリーなんかを売ってる店だ。
今までこんなのにあまり興味なかったからわざわざ友達に聞いて調べたんだ。
もう、それも馬鹿らしく思えてくる。何のために頑張ったんだろ、俺…。
この日のために服なんか買って、髪も時間かけてセットしてさ、結局は隣に康祐は居ないんだ…。
康祐は秀を選んだんだ。
そりゃそうだよな。醜くて、役に立たない俺なんかより、綺麗で、何でも人以上に出来る秀のほうが良いに決まってる。
俺がどんなに身体を捧げても、どんな手を使っても秀のほうが優れている。
つまり、俺の努力は全部無駄ってことだ。
馬鹿だよな、、、俺なんかが秀に勝てるはずなかったんだ。
そんなこと分かり切っていたはずなのに、、、康祐ならもしかしたらって思ってしまったんだ。
康祐なら俺を相馬舜として見てくれるんじゃないか、、、求めてくれるんじゃないかって自惚れてたんだ。
だから今まで頑張っていたけど、もうそれも疲れた。今日で俺の馬鹿な自惚れを消すことにしたんだ。
目の前にはシルバーリングが冷たく光っていた。