それから俺はずっと待っていた。
来ないと分かっていても、康祐がいつか来てくれるかもしれないと思っていたから、、、思っていたかったから…。
でも、それは間違いだった。いつまで待っても来ない事実は康祐にとって俺が何でもない存在だということを知らしめるだけだった。
いや、そんなことは康祐の告白を聞いたときから分かっていた。そのはずなのに改めてその事実を突き付けられると今にも泣きそうになる。
行こう…。このまま帰るなんて出来ないから。康祐があいつの看病しているのなんて見たくないから…。
きっと今そんなものを見せられたら俺、壊れちゃいそうだから…。
立ちあがって、2人で行くはずだった場所までの切符を買った。
ホームで電車を待つ。なかなか電車は来ない。冷たい風がホーム内を吹き抜ける。
寒さを感じて自動販売機であたたかいコーヒーを買った。それをぎゅっと握ると、じんわりと熱が伝わってきた。
「寒いね。」
ふいに聞こえたその言葉に反応して後ろを振り返る。するとそこには一組のカップルがいた。さっきの言葉通り寒そうにしながらポケットの中で手を握り合っているのが分かった。
手の中の缶コーヒーが冷たく感じた。
本当はこんなのじゃないんだ。こんな缶コーヒーじゃなくて康祐の温もりが欲しいんだ…。
なぁ、康祐。今、お前だれの手を握ってる?きっと秀の手を握ってるんだろ。
精一杯開いてもこんなにちっぽけな掌に沢山の愛情をこめて握っているんだろ。
俺にはくれないくせに…。
俺が身体をつなげている時ですら与えられない温もりを秀は何もしないで得ることが出来る。
無償の愛ってやつだ。
俺は有償の愛すら与えられないのに。俺がなにをしても与えてはくれないのに…。
康祐、温めてよ。
俺の手、こんなに冷たくなってるんだ。かじかんで缶のプルタブも開けられないんだ。
あっためてくれよ、、、