朝、いつもより早く起きてしまった俺は下の階へと降りた。

パンでも食べようかとテーブルの上を見ると、一枚の紙が目に入った。そこには母さんの字で「秀の体調が悪いみたいだから今日一日面倒見てやってね」と書いてあった。

俺の意見は無視かよ。俺は今日、今から康祐とデートなんだ。そんなことしてる暇ないだろ。しかも、あいつの世話なんか…。

俺は待ち合わせの時間に間に合うように、シャワーを浴びて今日のために用意した服に着替えた。

それでも一応気になって今俺はドアの前に立っている。

「秀…?」

やっぱり壁を隔てては聞こえないのか、中からは返事はない。そっとドアを開けて中に入ってみる。
ベッドには少しだけ苦しそうな表情をした秀が横たわっていた。

「秀、俺今から出ていくから…。母さんとか居ないけど大丈夫だよな…?」

『…ああ、心配するな。行ってこいよ。』

俺はその言葉を聞くと部屋を出た。これで気兼ねなく康祐と楽しむことが出来る。俺は洗面所で最後に身だしなみを整えると家を出た。

外は思ったよりも寒くてネックウォーマーに顔をうずめた。それでも顔に当たる風は刺さるように冷たかった。

でも、この後康祐とデートだと思うと足取りは自然と軽い。

待ち合わせ時間よりもずいぶん早く着いてしまったので、分かりやすい場所にある駅前のベンチに座って待つことにした。

こうして待っている時間も幸せに感じる。これって本当の恋人同士みたいだよな。

何度も携帯を開いては時間を確かめる。

…あと10分…。

…あと5分…。

…9時…約束の時間だ。

あたりを見回してみる。駅から出てくる人や入って行く人でたくさんの人がいる。鞄を持って忙しそうに歩く人、携帯をいじりながら歩く人、友達と話しながら歩く人、、、

それから、手をつないで歩く恋人たち…。

なのに、康祐は来ない…。

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