「なあ、康祐。握手して。」
康祐は一瞬訝しげな顔をしたけれど、手を伸ばしてぎゅっと握ってくれた。その温かい手は俺の迷いを断ち切った。
この温かい手をずっと握っていたいと思った。
「康祐、男同士の恋愛ってどう思う?」
康祐は驚いた顔をして俺を覗き込んだ。それでも俺は構わず続けた。
「同性愛ってどう思う?気持ち悪いと思うか?」
…ああ、引かれるかな…。もう俺が同性愛者だってことばれただろうな…。
『俺はそんな風には思わない。』
意外な答えが返ってきた。でも俺は驚いた素振りを見せないようにした。だけど、本当は心臓が高鳴ってうるさいと思うほど気持ちが昂ぶっていた。
だって康祐の顔が紅潮して、明らかに照れ臭そうにしていたから。
長い間の片想いが今現実になってくれる気がした。
「なあ、康祐。お前俺と同じ?」
勇気を出して聞いてみた。康祐は相変わらず顔を紅くしたまま口をつぐんでいる。
期待しちゃいけない。そう分かっていてもどうしても期待してしまう。
「康祐、、、俺は、、、」
お前のことが好きだ。
そう言おうと思っていたら、先に康祐が口を開いた。
『俺も、、、舜と同じだ…。』
時が止まってしまったかのように思えた。康祐も俺と同じ、、、きっと俺と同じように悩んで、俺と同じように苦しんで、、、
『俺、ずっとわかんなかったんだ、この気持ちが…。男同士なのにおかしいとか、これでも結構悩んだりもした。』
康祐の紡ぐ言葉がどんどんと俺の期待を膨らませていく。それと同時に康祐の顔の紅潮も増していく。
『舜はすごいよな。俺なら絶対に他の奴にこのこと言おうなんて思わなかった。』
心臓の鼓動が速くなっていくのがわかる。汗ばむ手でズボンを握った。
『舜、お前に言わなくちゃいけないことがあるんだ。聞いてくれるか?』
真っ直ぐな康祐の視線が俺を突き抜けた。俺は固唾を呑んで、ただ静かに頷いた。
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