『じゃあ、続き始めるか。』
康祐は少し楽しそうにシャーペンを握った。…悔しかった。
「ごめん、今日はここまでにしよう。俺、用事があるの忘れてた。もう帰ろうぜ。」
俺は慌てたふりをしながら広げていたノートや、シャーペンを片づけた。
『いや、いい。俺まだ残って勉強するから。舜は先帰っていいぞ。』
「えっ!?もう帰ろうぜ。一人で勉強しても分からなくなったらどうしようもなくなるだろ。もしかして先生のところに質問とかいかないよな?」
『そんな訳ないだろ。分からなくなったら秀にでも聞く。生徒会の仕事終わったらくるだろ。さっきまたって言ってたし。それに俺、家に帰ったら勉強しないんだよな。』
「…勝手にしろ…。」
康祐に聞こえるか聞こえない程度の小さな声で呟いた。
『何か言ったか?』
「いや、別に。じゃあ俺は先に独りで帰るからな。」
『ああ、じゃあな。』
俺は荷物をまとめて図書室を後にした。康祐は引き留めてはくれなかった。
夕焼けに染まった道を独りで歩く。本当ならこの隣に康祐がいたはずなのに、その姿はない。きっと、今頃秀と2人きりで図書室で勉強してるんだ。
俺よりもずっと頼りになる秀と一緒に、、、
家に着くと、俺は鞄を放り投げてベッドに身体を沈めた。そこからはもう康祐の匂いはしなかった。
―――
しばらくして下から声が聞こえた。どうやらいつの間にか俺は眠っていたようだ。重たい体を起して下に降りる。
そこには秀の姿があった。秀は俺を見ると口を開いた。
「舜。お前、康祐おいてどこ行ってたんだよ。」
その言葉に俺の想いは爆発しそうになった。
「関係ないだろ!」
お前の所為だ。結局俺はどんなに頑張っても秀には勝てない。
お前に俺の気持ちなんて分からないだろ。いつもお前の背中ばかり見てきた俺の気持ちなんか、、、
言うまでもなく、このテストで秀に勝つことはできなかった。
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