そんなとき俺は思い切って康祐に聞いてみた。

「康祐ってどんな子が好み?」

我ながら馬鹿らしい質問だったと思う。俺がどんなに康祐の好みに合わせても、俺は男なんだ。康祐の恋愛対象になれるはずがない。
だけど、その頃の俺は少しでも康祐に振り向いてほしかったんだ…。

康祐は少しだけ顔を赤くしながら答えた。

『俺は、、、頑張ってる子が好きかな。』

「はっ?頑張ってる子?」

『ああ、頑張ってるやつが好きだ。なんていうか、頑張ってるやつに頼ってもらいたいって言うか、気抜いて癒してあげたいっつーか』

「ふーん」

頑張ってるやつか…。俺、何頑張ろうかな。勉強?スポーツ?それとも、、、芸術?

芸術はないな。俺、絵とか下手だし、歌も音痴だし、ましてや楽器なんて弾けるはずないよな。

よし、とにかく勉強頑張ってみよう。それで、康祐にも勉強教えてやるんだ。今でも一応康祐よりは成績は上だけど、あまり変わんないしな。

よし、やるとなったら早速やろう。今日からやろう。俺はやる時はやる男なんだ。

それからというもの、俺は全くしなかった勉強を1日1時間、2時間、、、とどんどん増やしていった。

ついに成果を試す時が来た。期末考査一週間前になってから、俺は康祐と図書室に残って勉強するようになった。
放課後に二人で残って勉強する。しかも図書館は人気がなくて二人っきりだ。管理の先生も司書室にこもって出てくることはそうそうない。

夕日が部屋を紅く染める。

そんなことを考えながらぼーっとしていると早速康祐が質問してきた。

『なあ、舜。これってどうやんの?』

康祐の問題集に眼を落した瞬間「うわっ」て言いそうになった。

康祐が質問してきた問題は俺が勉強してきて唯一分からなかったものだったからだ。

「え〜っとこれは、、、」

俺が答えあぐねていると図書室のドアが開いた。自然と視線はそちらに向かった。そこには今、、、といういつも会いたくないあいつが立っていた。

「あっ、舜。康祐も何してんの?」

別に関係ないだろ…。いちいち声かけてくんなよ。

「そっちこそ何してんだよ。」
イライラしながら俺は聞いた。さっさと用済ませて出ていきやがれと念を込めながら。

「俺?俺は生徒会の仕事があって。」

それはご苦労なことだな。生徒会長様は大変だな。じゃあ用済ませてさっさと出て行けよ。

でも、そんな俺の願いとは裏腹に康祐は秀に声をかけた。

『秀、いいとこに来た。この問題教えてくんない?』

秀は持っていたプリントを脇の机に置いて、康祐の隣に座った。

やめろ。やめろ。やめろ。

秀の持った康祐のシャーペンはすらすらと問題を解いていく。

俺がどんなに時間をかけて考えた問題がどんどん解かれていく。康祐はそれを見つめている。

「ほら、これであとはこうしたら答えが出る。」

『そっか、ありがとな。秀。』

康祐が笑ってあいつを見ている。何だったんだろ、、、俺の努力って…。

「じゃあ、俺生徒会の仕事まだあるから。また後でな。」

そう言ってあいつは図書室を出ていった。

『やっぱ秀って頭いいよな。』

康祐がぽつりとつぶやいた。



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