あいつはいつだって優秀だった。
テストの点数も、スポーツの結果も、字の綺麗さに至るまで俺があいつに勝ることはなかった。
いつだってあいつは俺の上に居たんだ。
同じ顔で、同じ時に生まれてきたはずなのに…。
小さい頃は俺とあいつと康祐とよく三人で遊んでいた。でも、俺があいつとの違いに気がついたあたりから、あいつと一緒に居ることが辛くなった。
一緒に居ると自然と聞こえてくるあいつへの称賛、俺への失望
最後に言われることはいつも同じ
「秀君に比べて舜君は、、、」
親からも親戚からも友達からもみんなから言われた。いつだって比べられてきた。
でも、康祐だけは違ったんだ。
ほかの友達が俺に「舜君は秀君に比べて足遅いんだね。双子なのに。」って言ったんだ。
その時康祐は言ってくれたんだ。
「舜と秀は違うんだ。そんなの関係ないだろ。」
この時本当に嬉しかったんだ。
比べない。俺をただ一人の人間として見てくれる。あいつなんか関係なしに俺を俺として見てくれる。
そのことが嬉しかった。
しだいに俺は康祐に惹かれていった。康祐の優しいところが、強いところが、そのすべてが俺を惹きつけた。
あの頃はずっと康祐と一緒に居た気がする。学校の日はいつも康祐とつるんで、休みの度に遊びに誘っていた。
康祐は自分の家に来られるのを嫌っていたからあまり康祐の家には行ったことはないけど、よくうちに来ていた。
でも、俺の家に来るということは必然的にあいつと会うことになる。幼なじみだから仕方のないことだけど、あいつも康祐と普通に話す。
俺の醜い独占欲はそれを受け入れることは難しかった。
康祐の笑顔が、言葉が、眼差しが、あいつに取られるのが耐えられなかった。
あいつだけには取られたくなかったんだ。
康祐には俺だけを見てほしかったんだ…。
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